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『やあ…こんにちは』

「ああ"?誰だてめーは」

優羽の周りにはざっと50人ぐらいの人だかり。ガラの悪そうな不良ばかりを集めた…雲雀風に言えば草食動物の群れ。

目の前にはこの前のライフセイバーと名乗った男達がいた。優羽と気がつかないまま奴らは生意気だと睨みつけてくる。

こいつらが騒ぎになっていたひったくりか。すれ違った若いカップルが騒いでいたのを思い出した。
だとすれば先ほどの少年はこの男達の下っ端だと言う可能性が高い。沢田に仕返しに来たというところ、もしくはただのターゲットにされただけ。

なんて愚かなんだろう。いい年なんだから真面目に働け。

自分のことを棚に上げた優羽の目は哀れみと楽しみの混ざったように輝いている。
子供が悪戯をするときのように笑顔を絶やさない。

『僕はとっても機嫌がいいんだ。かかってきなよ、潰してあげるからさ』

「やっちまえ!」

カッとなった男達はそれを合図にいっせいに優羽に飛びかかる。だが男達の攻撃は掠りもしない、優羽は笑いながら軽々と避けていった。

人を困らし見下すことに喜びを感じるような悪趣味をもった子供のように笑う姿に男達は冷や汗をかく。

『うんいいね。でもあんまり弱いと加減がわからないから殺しちゃうかも…気をつけなきゃね』

優羽の言葉に誰もが恐怖を覚え動きが鈍る。殺気すら含まれていないのに背筋が凍る。
舌舐めずりする姿はまるで獣、狩りを楽しんでいるようだ。

優羽は心底楽しむように丁寧にひとり、またひとりと潰していく。あるものは足を折られ、またあるものは殴られ数メートル吹っ飛び記憶をなくす。


「…化け物かよアイツ!?」

恐怖に歪んだライフセイバーはつぶやいた。
もちろんその声はしっかりと優羽に届いていた。

『そうだよ?僕はお前らとは違うんだ』

いつの間にか残ったのはリーダー的存在なのか、男達の中心となっていたライフセイバーのひとりだけだった。

逃げだそうと背を向けるが

『どこにいくの?』

その言葉にまるで金縛りにでもあったかのように体は動かなくなる。


「…くそっ!死ね!化け物!!」

ライフセイバーは折りたたみ式のナイフを取り出し優羽に向かうが優羽は不適に怪しく笑った。

ただ一瞬、笑顔が苦痛に歪んだ気がしたがライフセイバーが気付くわけがなかった。

『久し振りに楽しかったよ。ありがとう』

顔面に鋭い蹴りが入りライフセイバーは意識を失う。見事に鼻がおかしな方向へ曲がっていた。

静かになったその場所を見渡した優羽はクスクスと笑う。

『マフィアじゃないから…殺さないであげてるんだからね?』

顔についた血を拭いとっていると足音が聞こえ振り返る。少年が何かを抱えて走ってきた。
それは先ほど沢田達をみていた少年だ。

「な…っ!!?」

少年は倒れた男達をみて驚いたように声を上げる。優羽をみた瞬間体が強張った。

『それ、ちゃんと返してやってくれないかな?』

「かっ返します!!」

『物分かりがよくて助かるよ』

少年は箱のようなもの、多分沢田達の売上金が入ったものを置いて走っていく。

その後複数の足音が聞こえてきた。優羽は追い掛けてきた沢田だろうと思いその場から離れることにした。


「え…!?…どういうこと…!!?」


沢田が駆けつけた時には多くの男達が倒れて気を失っていた。痛みにうずくまる者、怯えて動こうとしない者も少なくはない。

何より血の臭いがした。


「…桜…違う、これは…雪?」


季節はずれに舞うものは桜の花びらの形をしている。しかし触る前に霧となりなくなってしまった。
何かの見間違いかと目をこするとある声が聞こえた。

「へぇ…これ君がやったの?」

「ヒ、ヒバリさん!!?」

沢田の視線の先には雲雀がいた。雲雀は面白いものでも見つけたように怪しく笑う。

「ち、違います!オレが来た時には…みんな倒れてて…!!」

沢田は必死に否定した。まさかこんなことがオレには出来るわけがないと。

雲雀は「そう」と言って急に走り出す。
沢田は「ヒバリさん…?」と驚いたように首を傾げたが雲雀の姿は見えなくなってしまった。

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