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裏切らない、そう骸に誓いを立てたあと優羽は用事が出来たと言い、雪兎と骸を残しどこかへと行ってしまった。
骸は先ほどから雪兎の隣で不適に微笑んでいる。
嫌われていない、そう思えば不思議に安堵感を覚え何故かわからないが笑みが零れる。それを隠す為に雪兎は顔を逸らした。
「ところで貴方達ほど強い者なら通り名ぐらいあるのでは?」
骸にもやはりふたりの情報はなかったようだ。
噂も聞いたことがない、しかしこのふたりが大人しくしているなど到底有り得ないことだと骸は知っている。
もう何も隠すことなどない。雪兎は一息つくと小さく呟く。
『marionetteって呼ばれてる』
「クフフ…操り人形ですか」
骸はなるほどと特に驚いた様子はなかったが少し嬉しそうにまたもや不適に笑った。
「それは情報が掴めないはずですね、いくら調べてもキミ達の痕跡はどこにもなかった」
『みんな消してきたからな。邪魔なものすべて』
突然雪兎から明るい笑みが現れる。その表情は楽しさと苦しみが複雑に混じり合ったように歪んだものだったが、誰から見ても儚く美しい笑みだった。
「そうですね。彼らは消すべき人間です、雪兎には僕らだけで十分ですよ」
骸はクフフと表情を崩すことなく雪兎の行ってきたことを受け入れる。
『じゃーさ、祭り一緒にいってくれるか?』
「ええ、もちろん」
そしてふたりは街に出た。
『で、なんでボクが女物の浴衣なのさ!!意味わかんねーよありえねーよ骸だけズルい!!』
「クフフ…似合ってますよ」
騒ぐのは雪兎。折角なので浴衣を着たのだが骸に浴衣選びを任せた結果、女物の浴衣を着ることになってしまった。
淡い紫色の浴衣は睡蓮を想像させ、髪型は弄られポニーテールのカツラを着用している。
女にしては身長は高めだが、どこからみてもモデル級の美女だ。ただし胸はやはり男、真っ平らなのが惜しい。
『似合ってても嬉しかねーよ。骸みたいなカッコイい奴が良かったな』
骸は黒い男性ものを着こなしていた。雪兎は浴衣を掴み羨ましいと目を細める。
「雪兎は今は女性でしょう。言葉使いに気をつけないといけないのでは?バレたら大変ですよ」
骸の言葉に雪兎は肩を落とす。骸の言うとおり男とバレたら女装趣味だと勘違いされても可笑しくないのだ。
ならば人格を変えてやると雪兎は密かに意気込み思いっきり愛想笑いを浮かべて骸の腕に絡みつく。
内心自分をかなり嫌悪し、初めて羞恥を感じた。
『早くいこーよ、ねっ骸さん』
「おや上手いじゃないですか。いいざまですね」
『お前がやらせてんだろが…覚えてろよこのパイナップル』
「おや何か言いましたか?」
『気のせいだよ』
雪兎はさらに心の中で毒づいた。
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