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『やっぱりフゥ太はここにいたんだね』
ある部屋に入った優羽は片隅でうずくまるフゥ太を見つけた。
フゥ太はその声に顔を上げ優羽に抱きつく。
恐怖に怯え震える小さな身体。その姿が昔の自分と重なる。
今まで何をされてきたのだろうかと思えば気が沈み無いはずの心が痛む。
骸達はどんなものにも目的の為ならば容赦しない。
しかしそれは自分も同じ、邪魔になれば簡単に切り捨てる。
ここに彼らを責める者はいない。
ふるえは少し治まった…ようにも思えたがまだ恐怖は消えなかったようだ。
『フゥ太。もっと早く気づいてあげられればよかった…辛かったね』
大きな瞳から零れ落ちる滴を拾い上げるが止まることはない。ぼろぼろと落ちるのは恐怖と悲しみ、そしてこのひと時だけの安らぎ。
「優羽兄は悪くないよ、優羽兄は優しいもん」
『…優しくなんかないよ。骸達はボンゴレ狙いなんだね?』
フゥ太は静かに頷く。復讐の為に目をつけたのがボンゴレ10代目候補沢田綱吉。
だとすればこの後やはり彼らとの戦いになる。
自分は骸達を止めることはしない。
それは彼らを理解しているからこそ。
…雲雀恭弥、彼は敵になってしまうのだろうか。
彼の瞳に耐えられなくて逃げてしまったのは己が弱い何よりもの証拠。
思考を巡らせるが解決策など見つかるはずもなく時間だけがただ過ぎていく。
「優羽兄…大丈夫?」
『なんのことだい?』
フゥ太の手が頬に触れるのを感じた。
そして気がついた。
視界が涙で霞んでいる。
「優羽兄はいつも何かに怖がってる。僕にはわかるよ?」
『突然何を言い出すんだいフゥ太』
「大丈夫だよ、優羽兄は素直になったほうがいいと思うんだ。みんなわかってくれるから」
こんなも幼い少年に見透かされている自分が情けない。
そして自分を助けもしないこんなモノに助言し励まそうとするこの少年こそ優しいと呼ばれるに相応しい。
だがそれには応えられない。
背を向け歩きだすと穏やかな声が届いた。
「優羽兄…ありがとう」
礼を言う相手が間違っている、それはこれから助けに来るであろうボンゴレに言う言葉だ。
振り返ることなく僕はこの場を去った。
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