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『簡単な昔話だよ?準備はいい雲雀…ってその前に骸はその手を退けてよ』

雪兎は焦ったように骸を指差した。いまだに骸は桜のせいで立てない彼の髪を掴み無理やり持ち上げているのだ。

『風紀の雑用無理やりやらされてたけどボクの先輩だぞ!散々書類渡しやがってお前仕事してないじゃん、一発殴らせろコノヤロー』

「クフフ…日頃の鬱憤を晴らしてますね」

骸はしょうがないといった様子で手を離すが桜は消さない。
やはり身体に力が入らないのか雲雀は倒れたままだ。

なんか悪役の気分だ。
こうしている間に千種と犬がカウントダウンを進めている。
綱吉達では楽な戦いは出来ない。

どうやらボンゴレの近くにいすぎてしまったようだ。同情ではない、心配という二文字が浮かぶ。
もちろんマフィアではなく、知り合いとしてだ。

「雪兎話を進めなさい」

『な、なんで軽く怒ってんだよ?』

「余計なこと考えてないで話を進めろと言っているんです。バカな君にも聞こえたでしょう」

『…バカって言ったな、このパイナッ…いや、何でもないごめんなさい』

言葉に出した覚えはない。顔に出した覚えもない。
でもいつも骸にはバレてしまうと苦笑をする雪兎だが雲雀にしっかりと向き合った。

放置されていた雲雀はもちろん不機嫌。先ほどよりも険悪な雰囲気がその場を包んだ。

『雲雀先輩の探してる人いるっしょ?』

「それが…なに」

「まだわかりませんか?」

「はっきりいいなよ」

骸が小馬鹿にすると雲雀は立ち上がろうとするが脚には力は入らず立つことは出来なかった。
クフフと笑うと余計に感に触ったのか殺気が溢れ出す始末。

ふぅ…と溜め息をついた雪兎は先ほどとは一変し真剣な眼差しになった。

『優羽は昔日本に来ているんだ。しかも左肩に銃弾を撃たれてね、傷跡は実験で跡形なく消えたけど』

「!」

「クフフ、そして彼は名前も知らない彼を探している」

『他の誰でもない。ね、そうでしょ?』

雪兎の視線の先には扉の横で壁に背を預ける少年の姿。雲雀は目を見開きその名を呟く。

「…優羽…」

少年は悲しみと嬉しさの混じった微笑みを浮かべたあと雲雀を真っ直ぐ見つめた。


『ハジメマシテ』


冷たい笑み。

誰かの心が崩れ始めた。

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