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【in並盛町】


「ぐはっ、うっ!!」

くぐもった声と呻き声が街中で響く。月も星も雲の広がったこの空では見ることすらできない。
そんな光ささない暗闇の中でふたりの少年が唇の先を吊り上げた。

「よえーよえー風紀委員恐るるにたらーず!」

少年達の足元にはボロボロになり立ち上がる力すら残っていない人間がいた。その男の頭を踏みつけながら片方の少年は舌を出す。
ただの喧嘩にしてはあまりにも一歩的な傷の付き方、酷いありさまだった。

「貴様ら…何者だ…」

「んあー?遠征試合にやってきたとなり町ボーイズ?」

「それつまんないよ、早く済ましてよ犬」

犬と呼ばれた少年がふざけたようにだらしなく舌を出したまま嘲笑った刹那

「うぎゃああああ!!!」

男がこれ以上にないほどの苦痛の表情を浮かべ気絶する。何かを無理やり引き抜いた音がここに響き渡った。







『風紀委員が襲われた?』

優羽はあまり驚かなかった。
所詮風紀委員は不良の集まりでしかない、風紀を正すという名目で好き勝手に暴れているだけの集団だ。

誰に怨まれていても襲われていてもおかしくない、そもそも彼らがどうなろうと自分には関係がないのだ。

『土日だけで風紀委員8人が重傷で病院送りだってー。死んでんなら話はわかるけど怪我ぐらいで騒ぐなんて大げさじゃね?』

『ここは平和ボケしてるからね。僕らの基準で測っても無駄だよ、彼らにとっては謎の暴力事件なんだからね』

雪兎は制服に腕を通しながらそれもそうかと頷く。しかし何かが引っかかるようで顔をしかめたままだ。

『まあ、一般人の力自慢にしては目立ち過ぎたかな。警察が動き出すのも時間の問題かもね』

『あと追加情報、笹川了平もやられたとか』

『おや…狙われてるのは風紀委員だけじゃないようだね』

優羽は少し興味を持ったようだ。ただ風紀委員潰しに飽きたのか、それとももともと無差別での悪戯だったのか。

『笹川も含めてやられた順に歯が抜かれてる。まだまだ終わりそうにないよコレ』

『ふふっ悪趣味なカウントダウンだね。悪戯の犯人は子供かな?』

制服を気にならない程度に着崩した優羽はわかりやすいなと冷めかけたコーヒーを喉に流し込む。

『ねぇ優羽、最近フゥ太がいないのと関係あんのかな。てか犯人なんとなくわかっちゃってんだよね』

『奇遇だね、僕も悪趣味な子供に心当たりがある』

つまり情報として使われているのは喧嘩ランキング。例え違ったとしてもフゥ太は主犯の近くにいる。

何よりこのままランキングが進めば間違いなく獄寺や山本へとボンゴレファミリーに辿り着く。

優羽と雪兎はカバンを持たずに外へと走り出した。

向かう先は、黒曜ヘルシーランド。

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