T

□U
2ページ/4ページ


【雪兎side】


『もう僕は昔の…貴方にあった時の僕ではないんだよ。わかって頂けた?』

「…わからないよ」

『わかって頂けないのなら何度でも説明させて頂きます。いい加減現実を見たらどうだい?』


違う。いつもの優羽じゃない。

仕事してる時の優羽に似てるけど見たことがないほど歪んでる。雲雀はそんな優羽の顔を見ることをしない、否見れないのだ。
しばらくすると優羽は少しイラついたように声を上げる。
まるで狂った人形のように。


『僕は人間であって人間ではないんだよわかる?君達とは違うんだよ』

つまりボクらに与えられた能力と力のこと。

見た目は変わらないのに何もかもが違う全く異なる異質な存在。これは廻った者にしかわからない。
そうやって自分に言い聞かせることにより自分を保とうとするボクらの弱い心と決意はねじ曲がっている。

「…何が君をそこまで追い詰めるの?」

『…っ!』

雲雀の言葉に優羽の瞳が揺らぐ。笑みは消え無表情に近いものへと変わっていた。
その言葉は重くてツラいもの、言われたくなんかないもの。

深い悲しみを隠してまで貫き通そうとする偽りの心は見透かされ、言葉は鋭く尖って突き刺さる。

雲雀に何がわかるって言うんだ。優羽は悲しいはずなのに、ここにいる誰よりも悲しいはずなのに。


誰よりも寂しいくせに。
誰よりも強がりのくせに。
誰よりも何かを必要としているのに…


そう思うたびに気づかされるんだ。結局ボクには何もできないと。
ボクがいなかったら優羽はもっと人に甘えられることが出来たのかもしれない。ムリして強くならなくても良かったのかもしれない。
もっと幸せになれたのかもしれない。


優羽…ごめんなさい。
ボクはどうするべきなのか、ボクには何が出来るのかわからないよ。

でもそれでも弟はやめられない。
だってボクたち兄弟なんだ。

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ