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□U
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いつ道を間違えたのだろうか

あの時はこれしかないと思っていた

この道しかないと確かに僕は選んだ


許してなんて言わない

一生恨んでくれてかまわない


これが最善の僕の選択のはず





【ヒバリside】


ハジメマシテと彼はそう言った。
他人ごとのように初めて出会ったかのように彼は笑った。

でも僕はこの上ない喜びを感じていた。探していた彼にやっと本当の意味で会えた。
そしてその彼は優羽だった。

ここにいる。優羽は僕のそばにいたんだ。

「クフフ、折角ですし席でも外しましょうか」

『変な気を回さないでくれるかい?君の考えているような積もる話もない、ふたりともいてくれていいよ』

『優羽こそ変なこと考えてない…?』

『こんなときに何を言い出すのかな』

ゆっくり歩いて来る優羽に雪兎は表情を固くし少し青ざめる。その隣では六道骸が優羽の様子をみた後そうですかと短く呟くように返事をした。

いったい何の話をしている?

そう言葉に出す前に優羽は倒れた僕を見下ろす形で見ていた。それに気づき僕は顔を上げる。
だが優羽の顔にはいつもの優しげな表情はなく不適に笑う歪んだものが貼りついていた。

彼の様子がおかしい、それは今の僕にもよくわかった。

『悪いけど僕はもう君とは遊んでいられないから』

「…遊んでいられない?」

思わず聞き返してしまった。だって意味がわからない。何を言っているの、何を思っているの。
知りたいことは沢山あった。

『…優羽…』

何故か雪兎は泣き出しそうな顔をした。だが優羽はそんな雪兎に目もくれず冷え切った視線を僕に浴びせ続ける。

『僕は君達とは違う世界の人間なんだ。お気楽な君達とは全く違う。だからもうお友達ごっこはおしまいだよ』


お友達ごっこ…?
何それ…違う、違うよ、違うよね…。

ねぇ…優羽。嘘だと言ってよ。

そんな言葉なんか信じられない、その言葉が聞きたかったわけじゃない。そんな願いも虚しく彼はすべてを肯定するかのように笑った。





【骸side】


優羽を追いつめるもの。
それは彼にしかわからないこと。

今目の前にいる彼は淡々とした口調で雲雀恭弥に告げる。遊びは終わり、お友達ごっこは終わり、と。

『意外だな、そんなに驚いてくれたのかい?』

皮肉げに笑みを浮かべた後、俯いている雲雀恭弥の顔を屈んで覗き込む優羽。いつもの彼と同じのように見えるがまるで違い過ぎる。

だが感情を隠すのが上手い優羽の心は僕にはわからない。ただわかるのは時々揺らぐ彼の瞳、その揺らぎが迷いからきているということ。

『……骸』

隣を見ると不安げに僕の服を掴む雪兎。
雪兎は一番優羽の近くにいた存在故に一番彼の変化に動揺している。見たことないだろう、ひとりの人間にここまで執着している兄の姿など。

本当にこの人間がどうでもいいのであればわざわざこんな言い方はしない。放っておけば時間とともに薄れ忘れ消えていくというのに彼はそれを良しとしない。
拒絶し拒絶されること望み、忘れないよう憎しみの種を植え付ける。無意識なのが恐ろしく酷い。

「まだ優羽は壊れていません、大丈夫です」

他のふたりには聞こえない程度に話すと雪兎は少し安心したように息をつく。

だが"まだ壊れていない"だけ。

いつ彼が平常心を失うかわからないのが現実であり残酷な末路のひとつ。だが優羽は一番ツラい道を自ら選んで進んだ。
大切な人を自らの手で傷つけ遠ざける道を。それはこの僕でも選ぶことの出来ない道。

雪兎を見て思う。そんなことをしたら僕の大切な人は崩れ落ちてしまう。

しかし崩れ落ちてしまうのは雲雀恭弥、彼ではなく…優羽。


貴方の方ではないのですか?

貴方は少し優し過ぎるのですから。

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