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『…実はあんたらって超バカ?』

「かみ、ころす…」

『弱々しく言われても怖くないんだけど!てか痛々しいから大人しくしようぜ』

屋上はボロボロだった。フェンスには大きな穴や外れかかった箇所が見られる。
ドア付近のコンクリートの壁には窪みがいくつもの出来ていた。足下には細かい破片が落ちている。
それだけでも十分驚くが一番驚いたのは血まみれになり立ち尽くしていた見覚えのある人物、捜していた風紀委員長の雲雀と跳ね馬ディーノだった。
服の至る所に赤いシミができ、肌や頬には鮮血が伝う。

ボクは動けなくなったふたりをその場に座らせ休戦させた。

『跳ね馬がここまでボロボロになるなんてな!』

「…は、はは」

空気を読まずにウキウキと言ってみたが跳ね馬からは乾いた笑いが返ってきた。相当疲れているらしい。
よく周りを見渡せば所々に小さな血だまりができていた。どちらの血なのか最早検討がつかない。

「…それにしても危なかったな、なんつーか予想外に恭弥が…」

溜め息とともに掠れた声のディーノが空を仰いだ。その言葉に雲雀は特に反応しない。

『ふーん、そうなんだ』

「なんか、雪兎優しくなったよな!また名前呼んでくれねーか?」

『…何のこと?』

へらりと笑った跳ね馬からボクは背を向けた。




暫くすると跳ね馬の部下とロマーリオ来て怪我をしている跳ね馬を連れていった。
多分病院に行くのだろう。

『…雲雀は病院行かねーのかよ?』

取り残されたあと雲雀に聞いてみたが返事はこない。さっきから何だか変だ、余りにも口数が少ない。
血を流し過ぎたのではと顔色を伺うが特に青ざめたようにも見えないし体調不良とも思えなかった。

(何考えてんだか)その場にいずらくなったボクは今更ながら包帯でも取りに行こうかとドアに手をかけた。しかし雲雀がゆっくり立ち上がったので手を止めた。

『やっと保健室とか行く気になった?』

「…この前の君は、君なのかい?」

この前?一番最後にあったのは…。

もしかしたら雲雀はボクの体で会いに行った優羽のことを言っているのかもしれない。でも悪いけどボクは何も言わない。だって優羽のこと雲雀に言いたくない。

人に聞くんじゃなくて自分で気づけよ。

「…答えなよ」

『はぁ、何言ってんのさ?ボクはボクだっつーの』

呆れたように笑うボクの心は渦をまいていた。日常茶飯事で作り笑いしていたのに今日この瞬間だけはちょっと苦しかった。

雲雀は短く「そう‥」と言ったあとボクより先に屋上を出て行った。

思わず見上げた空は澄んだ水色。

『ごめん、優羽』


何故か謝らずにはいられなかった。


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