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ドサッと何かが落ちる音がした。ルッスーリアが了平の拳により倒されたのだ。

「うぎゃあああ!!」

ルッスーリアが左膝を抱え込みながら苦痛に叫んだ。もう左足は使いものにならないらしく立つのもやっとといったところだった。

「勝負あったね」

『そうだな』

ベルの言葉に相槌を打った。しかしルッスーリアは立ち上がる。何かに怯えながら。

『何で…?』

ボクはもう勝負する必要はないと首を傾げたが、

「しししっアレだよ」

ベルが楽しそうに笑みを広げた。ベルが見ていた方に目を向けるとヴァリアー側にいるロボット…?らしきものが何かをしている。すると発砲音とともにルッスーリアの背から血しぶきがまった。
今更ながらヴァリアーのやり方を思い出し、ベルの笑みにつられたようにボクも笑った。

そしてルッスーリアが倒れ笹川了平の勝利が決まったのを見届けた。

やるせない。綱吉達の心情を察するには簡単過ぎる程この場は静まり返り重かった。それよりもルッスーリアに発砲したものは一体何だと言うのだろうか。

『ベル、ロボットって守護者として認められるわけ?』

「ロボットじゃなくてゴーラ・モスカだよ。ちなみにボス補佐ね」

『‥ふーん』

「じゃーまた明日」

『あ、ちょっとまっ…』

まだ聞きたいことはあったのに、そう言いかけたが口を紡いだ。ベルはすでに闇に紛れ姿さえなかった。本当に神出鬼没な奴だと溜め息をついた。
何だか最近溜め息ばっかついてる気がする。

溜め息をつくと幸せが逃げる、誰かが言っていた言葉を思い出した。
外ではリング崩壊ととてもに煙が辺りを包んでいる。

『ボクも帰ろっと』

窓から離れ明かりのない暗い廊下を歩く。コツコツと靴音が響いた。

ただ気になることがひとつ。例のふたりの姿がなかったことだ。何かしらの準備があるのだろうか、或いはただ来なかっただけなのか。

『(もしかして超余裕ってわけ?)』

ボクはゆっくりと自宅へと向かった。






その頃、月明かりの届かない廃墟と化した建物の中に白い姿があった。
所々破壊され崩れかかった薄気味悪いこの場には似つかわしくないほど白い猫だった。

猫は道をわかっているように迷うことなく歩き続けた。
ひび割れたボウリングのピンを飛び越え、壊れた椅子を避け、床に散らばったガラスの破片を器用に避けていく。

しかしある一室につくと猫はピタリと止まった。
その部屋は先程通ってきたところとはあまり変わらず暗く散らかっていた。しかし猫はよりいっそう暗い壁際を見つめ目を細める。
猫の左目は紫色に光っていた。

『いるかい?』

突然少年の声が響いた。低くもなく高くもない声の主はいったい誰なのだろうか。

『誰かいるのだろう?』

問いかけるように少年の声がまた部屋に響いた。だが猫一匹しかいないこの部屋では返事をするものはいなかった。
猫はゆっくりと尻尾を揺らし元来た道を歩き出した。しかし直ぐに何かに気づき立ち止まった。

「なんらこいつー」


そこには制服をだらしなく着こなした金髪の少年がいた。呂律がまわらないせいか見た目とはまた違い幼い印象を受ける。

「犬…優羽いた?」

少年の後ろからは白い帽子を被った少年が姿を表した。先程の少年よりも物静かだ。
犬と呼ばれた少年は大きく首を振る。

「おっかしーなぁ、確かに優羽の声だったっつーのにさぁ」

猫は困った様子のふたりを見て目を細めた。

『ここにいるっつーの』

低くもなく高くもない声が不満そうに呟いた。


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