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「大丈夫…?少しフラついてるみたいだけど…」

日が沈み夜がきたあとふたりの少年と小さな赤ん坊が並盛中へと足を進めていた。
寒いとまではいかないが、冷たい風が静かに髪を揺らした。

「初めての超モードで…ちょっと疲れただけです」

「そっか、付き合わせちゃってごめん」

フラついた足取りで無理して笑う少年、バジルの顔色は良いものではなかった。それを気遣いながらもうひとりの少年、沢田綱吉は申し訳なさそうに軽く俯いた。
どうやら綱吉の修行の相手はバジルだったらしい。

「いよいよ獄寺の勝負だな」

赤ん坊、リボーンは塀の上を歩きながら言った。
今晩は嵐の守護者の勝負。
現在1勝1敗、この勝負の勝ちを逃せば此方が不利になってしまう。何としてもここは勝ちたいところだ。

「獄寺君ならきっと大丈夫だよね」

綱吉は心配ながらも獄寺の勝利を信じた。
「獄寺の相手はベルフェゴールって奴でな。プリンス・ザ・リッパーって通り名なんだ」

「プリン…?」

「切り裂き王子って意味だぞ」

「切り裂き…おうじ…?え、王子!?」

「王族の血を引いてるらしいんだ」

リボーンの言葉に綱吉は驚いた。ヴァリアーに王子と呼ばれる人物がいるなど考えたこともなかったからだ。リボーンは若干顔を曇らせながらもベルの説明をした。

「常人離れしたたぐいまれなる戦闘センスをもてあまし自らヴァリアーに入隊した変わり種だ」

「拙者も親方様から聞きました。こと戦闘においてだけなら、ヴァリアーで最も才能があるのはベルフェゴールだと」

バジルは頷きながら付け足した。心配要素が増えたのか綱吉からは先程よりも焦りがみられる。

「獄寺君そんな恐ろしいのと…」

「厳しい勝負になることは間違いねーな。そうだろ?雪兎」リボーンは立ち止まり後ろを振り返ると、慌てたように綱吉とバジルも振り返った。

『バレた?あ、バレバレか』

闇の中からボクは一歩前に出た。外灯に照らされボクの姿が浮き上がるとリボーンがニヤリと笑う。

「今まで何処にいたんだ?アイツが捜してたぞ」

『アイツって?』

「リ、リボーンどういうことなの!?なんで雪兎君が!」

ボクは慌てふためいている綱吉を宥めたあと『ボクもみんなが心配なんだ』そう言った。
バジルも綱吉も頷いてくれたがリボーンが何故かボクの顔を凝視していた。『何?』と問いかけたがリボーンは何も言わなかった。

まるでその言葉を本心ではないと否定されているみたいに。

…これだけは本心だよ。

いつの間にかボク達は並盛中にたどり着いていた。校門には山本と笹川了平がいた。しかし獄寺の姿は見当たらない、どうやらまだ来ていないらしい。

「雪兎も来たのか久しぶりだな、優羽もいるのか?」

「お、お兄さん、あの、優羽さんは…!」

了平の言葉に綱吉は慌てた様子で口を出した。ボクを気づかってくれたようだ。しかしもうその必要はないのだ。

『優羽は来てないぜ?今日はボクだけ』

「雪兎君…」

笑ってみせると綱吉はどことなく悲しそうな顔をしていた。ボクのことでそんな顔しなくていいのに、そんな顔する時間などないのに。
変な心配をかけてしまっていることを自覚した。

『それで獄寺は何でこないの?』

「シャマルに止められてるのかもな」

獄寺にダイナマイトを教えたのはシャマルらしい。あれだけシャマルを嫌っているような素振りを見せていた獄寺だが、弟子になったと知ればやはり嫌いではなかったのだと実感する。

「そんな暗い顔すんなって!あいつなら大丈夫なのな」

『お、おう!だよな』

暗い顔など気のせいだと思うが、山本の勘違いに同意しボク達は並盛中の校舎へと入った。


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