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「それは本当…?」
『本当だよ、雪の守護者はボクともうひとりいるんだ』
病院の看護婦に赤く染まった肩の包帯をかえて貰っている間、ボクは綱吉に告げた。
看護婦にはマフィアごっこだと勘違いされてしまっている。だが今はそんなことを恥ずかしがっている場合ではない。
…綱吉がご立腹なのだ。
『あと、今日はもうひとりの雪の守護者が戦う番なわけでして…』
ただ昨日のボクの対戦はリング争奪戦の勝利にカウントされなかった。雪の守護者のふたりの勝者は全体を通して勝ったファミリーの守護者になるようだ。
つまりヴァリアーが勝てば、ヴァリアーではないボクも晴れてヴァリアーの雪の守護者となるわけだ。また逆もしかり。
「つまりディーノさんも父さんも雪兎君が守護者だって知ってたんだね…」
『そうそう。ビックリなことに全部知ってたんだよ、ボクのことも調べてたみたいだしさ。ま、ボクのこと調べても時間の無駄なだけなんだけど!ククッ‥!』
「そうなんだ、でもそうだよね。雪兎君って本当に何も教えてくれないから調べたくなるよね!」
綱吉は黒い笑顔でニッコリと笑う。ズーンと効果音が付きそうな程空気が重くのしかかった。
何もわかっていない看護婦さんは仲良しだね〜と笑い、包帯を片付けたあとペシリとボクの背中を軽く叩いた。
「じゃあそろそろいくから…今日の夜来れないんだよね?」
『うん、看護婦さんが君は病院から出ちゃダメよ!…だとさ』
それを聞いた綱吉は振り返ることなく病室をスタスタと出て行ってしまった。ひとり残された病室はどことなく寂しいものだった。
しかし綱吉の背中の方が何倍も寂しそうだった。
『はぁ…』
浅い溜め息が漏れる。だがきっと綱吉は深い溜め息をついているのだろう。
しかし綱吉はボクを追い詰めたりはしなかった。
それが不思議。てっきりいろいろと聞かれるのだと思っていたが、ボクが話し出すのをまってくれているようだった。
ボクのことを少なからず理解してくれている。
うれしさ反面悲しさ反面。
あと少しだけ…
あと少しだけ時間が欲しい
マフィアでも綱吉は綱吉
マフィアでもみんなはみんなのまま
そう思えるまでもう少しまってて
もう少しだけ我が儘聞いてよ
あとちょっとで終わるから…
ボクは病室の窓をゆっくりと閉めた。
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