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「あーやって突っ立ってんのが修業なのかコラ!」
『あれは現実逃避だよ』
「ちげーだろ、死ぬ気の零地点突破のタイミングをはかってるんだ」
風が心地よいこの場所でボクはコロネロ達とともにいた。人里を少し離れた場所で綱吉の修業が行われてることを知り病院を抜け出して来た。
綱吉とバジルに病院を抜け出したことに対しての注意を受けた。
しかし遠くに来ているのだ、早々帰る気にはなれない。
綱吉を包むように燃え上がる鮮やかな炎。いったい零地点突破とはどんなものなのだろうか。今回の戦いの鍵になることは間違いない。
『…死ぬか生きるか』
「どうされましたか雪兎殿?」
『いや。あ、綱吉は?』
「沢田殿なら山を下りてジュースを買いに行きましたよ」
『そっか』
リボーンとコロネロが真剣な眼差しで何かを話している姿を見ながらボクは目を伏せた。
しかし何故ボクは人が成長しようと足掻く姿を見ると何ともいえない疎外感を覚えるのだろう。改めて綱吉の姿を見て思った。
だけど強くならないと命の存続が危うい。
綱吉達は友達、でもマフィア
…?
…ボクは綱吉達がマフィアだと知っていて近づいたんじゃなかったのか?
なのにマフィアになって欲しくないだとかマフィアに関わって欲しくないだとか…
ボクは何を勘違いしていたんだ?
矛盾しすぎだよ
勝手すぎるよ
意味わかんないじゃん
何も出来ないくせに悲劇のヒロイン気取り?情けないな、我ながら。
「どうしましたか雪兎殿?」
『…ボクを一発殴れ』
「え?」
バジルはボクの言葉に微動だにせず固まった。
わかってる。
意味ないことなんだ。無意味なんだ。
でも
『いいから殴れ』
「何故ですか!?何故急に!?」
『頼む、手加減なしだ』
困り果てているバジルに勢いよく頭を下げた。
コロネロの視線が何故か痛かった。
「やってやれ、バジル」
「しかしリボーンさん!拙者は…!」
「男が頭下げてんだ、何か意味があるんだろ。コラ!」
リボーンとコロネロの言葉にバジルは静かに頷いた。
小瓶に入った薬のようなものを飲み込んだバジルの頭には死ぬ気の炎がゆらゆら揺れていた。綺麗で澄んだ色をしていた。
「本当に…いいんですか?」
『おう』
バジルが走ってくる。すぐ目の前にはもう拳が迫ってきていて、鈍い音とともに右頬に痛みが走った。
ボクの体は数メートル吹き飛ばされ尻餅をつく形で地へと落ちた。
『……っ』
「雪兎殿…!」
頬をさすりながら見上げれば駆け寄ってきたバジルの心配げな顔があった。
頬はジンジンと痛みを増す。本気で殴ってくれたようだった。
『…いいパンチだな』
「そんなこと言ってる場合ではありませんよ!?頬が腫れて…!」
『何言ってんだよ?ボクが殴れっていったんだ、それぐらい当たり前だよ』
ボクはすくっと立ち上がり両腕を上げて伸びをした。
何だかスッキリした気分だった。
『じゃ、先帰るな!』
「お待ち下さい、雪兎殿」
『また後でなリボーン』
「あぁ、遅れんなよ」
歩き出した後ろで慌てたようにバジルがボクを引き止める。
「お待ち下さ『バジル!』…?」
遮った言葉に重ねた。
『おかげで気合い入った!…サンキュ』
「雪兎殿…」
バジルの不思議そうな顔とリボーンの驚いたような顔を見てボクは笑った。
「何だったんでしょうか…」
雪兎が去った後、バジルは首を傾げていた。黙って見ていたコロネロは笑みを浮かべていた。
「アイツ面白いやつだな、いい目してたぜ。コラ!」
「拙者は雪兎殿が何を考えているのかよくわかりません…」
「まーな、雪兎は自分のことを話そうとしないからな」
しかしそういいながらもリボーンは楽しそうだった。
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