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『雪兎!こっちだよ!』
その頃、幼い少年ふたりは見知らぬ道をただひたすら走り続けていた。
優羽は一回り小さい弟の手を握り締めている。
『ま、まってよ優羽!あの人たちそんな悪い人には…』
『悪いヤツに決まってる!他のマフィアはみんな悪いに決まってるんだ』
『でも…』
『そんなに言うなら…雪兎ひとりで戻ったら?』
『そんなっ!』
『じゃあねっ…バイバイ!』
優羽は雪兎の手を放し、勢いよく走り出した。
雪兎は叫ぼうとしたが、振り返ることのない背中は小さくなって消えてしまった。
行き場のない寂しさと不安。
『…優羽のばかぁぁぁぁ!』
震える拳を握り締め目に涙をためた。
精一杯の小さな叫び声。
だが誰にも届かず空に吸い込まれていった。
『…僕らのファミリー以外のマフィアはみんな悪いヤツなんだ…なのに何で…』
あれから優羽は眉をつり上げながら早足で道を歩いていた。
思い通りにいかないこと、そして突如として現れた他のマフィアに混乱していた。
まずここはイタリアではない。
『…雪兎のばか…ばかばかばかばか…ばか…』
仲良く手を繋ぎ歩いている家族連れを見て寂しくなった優羽。
後ろを振り向いても弟の姿は何処にもない。
『…雪兎の…雪兎の…ばかぁ』
幼い優羽は来た道を泣きながら戻り始めた。
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