U

□1
4ページ/8ページ



『雪兎!こっちだよ!』

その頃、幼い少年ふたりは見知らぬ道をただひたすら走り続けていた。
優羽は一回り小さい弟の手を握り締めている。

『ま、まってよ優羽!あの人たちそんな悪い人には…』

『悪いヤツに決まってる!他のマフィアはみんな悪いに決まってるんだ』

『でも…』

『そんなに言うなら…雪兎ひとりで戻ったら?』

『そんなっ!』

『じゃあねっ…バイバイ!』

優羽は雪兎の手を放し、勢いよく走り出した。
雪兎は叫ぼうとしたが、振り返ることのない背中は小さくなって消えてしまった。

行き場のない寂しさと不安。

『…優羽のばかぁぁぁぁ!』

震える拳を握り締め目に涙をためた。
精一杯の小さな叫び声。
だが誰にも届かず空に吸い込まれていった。




『…僕らのファミリー以外のマフィアはみんな悪いヤツなんだ…なのに何で…』

あれから優羽は眉をつり上げながら早足で道を歩いていた。
思い通りにいかないこと、そして突如として現れた他のマフィアに混乱していた。
まずここはイタリアではない。

『…雪兎のばか…ばかばかばかばか…ばか…』

仲良く手を繋ぎ歩いている家族連れを見て寂しくなった優羽。
後ろを振り向いても弟の姿は何処にもない。

『…雪兎の…雪兎の…ばかぁ』

幼い優羽は来た道を泣きながら戻り始めた。

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ