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空が青い。

清々しいほど綺麗な空だ。本当だったら今頃窓際でのんびりしているのに、何故か汗だくで走り回っているボク。
隣で走っている獄寺は気難しい顔をしていた。

『ったく、なんでボクが…』

「ぐだぐだ言ってねーで協力しろ!」

これも全てリボーンのせいだ。家に帰っていないだので騒ぎ。おかげで早朝から獄寺の呼び出しだ。

『いくら捜したっていないもんはいないんだよ。お前なら気づいてんじゃねーの?』

「……」

綱吉の話ではリボーンが10年バズーカで消えたらしく、更に消えたその場には10年後のリボーンは現れなかった。
だとしたら10年後リボーンは存在していないかもしれない。

故障だとしても未来で同一人物がふたり存在することはないだろう。過去が消えれば未来も消えてしまう。

リボーンは存在しなかったことになりそれに関わっていた人間の運命も記憶も変わる。
だが綱吉やボクらに記憶があるということはやはり…

『綱吉はこの緊急事態に気づいてんの?』

「多分だが…気づいていらっしゃらない、これ以上不安な顔をさせるわけにいかねー」

『なる程、気づいてんのは獄寺とボクだけね。今10年バズーカを持ってるのはランボでいーか?』

「あぁアホ牛だ。それがどうした?」

『取り上げてくる』

「は?おい雪兎!」

逆走しだしたことに獄寺は声を荒げるが無視をして走ることにした。嫌な予感がする、こういう予感は当たるものだ。

故障した10年バズーカを早く修理しなければいけない。
故障したままでは他にも帰ってこない人間が増えるかもしれない。あのリボーンが存在していない10年後だ。

何が起こっているのか予測不可能。危険極まりない。
もしかしたら綱吉が家に戻っているかもしれない。
そう思うと焦るばかりだ。

『頼むから、間に合ってくれよ』

最悪な事態を想像したボクは修羅道を使ってまで走り続けた。




「あ、おまえ!ランボさんに会いに来たのかー?」

足元にやってきたランボの手には10年バズーカが握られていた。

遅かった。

部屋には彼の姿はなく白い煙がモクモクと立ち上り消えていく。

『綱吉はおまえが消したのか?』

「し、知らないもんね!ツナがランボさんのとろうとしたから…あ」

『バカだなお前』

脱力感にベットに座り込むとランボは10年バズーカをいじり始めた。無理矢理取り上げると綱吉と同じく10年後に飛ばされることになるだろう。いったいどうしたものか。

だが素直に渡してくれはしないだろう。大人気ないがここは覚悟して取ることにする。

『危険だから没収する、よこせ』

「ダメだもんね!ボスに使っちゃダメって言われてるもんね!」

『故障してんだから危ねーんだよ、修理に出すから』

「ダメー!あ」

カチッと引き金を引く音がしてとっさに身を引いた。
ドカンと爆発音が響き、拳ほどある大きな弾丸は窓から飛び出していった。
窓から身を乗り出し弾丸の行方を追うと家の前で煙が上がった。
誰かが10年後に飛んだらしい。
一般人を巻き込んでしまったと思い慌てて2階から外へ飛び出したが

「お前そんなことしてたのか?」

黒光りしたスーツに見覚えのある髪色。少し低くなった声。

「2階から飛び出すとか普通じゃねーよ」

『…あんたは、獄寺隼人か?』

「久しぶりだな雪兎」

『いや、ハジメマシテだよ』

冷たくそう言い放つと獄寺隼人だと思われる大人は苦笑した。





「懐かしいな」

半ば無理矢理押し掛けてきた獄寺はリビングのソファーへと身を沈めている。
現在ここはボクの家だ。既に5分など等に過ぎている。

『おい獄寺隼人。いったい何が起きてる』

「なんでてめーは他人行儀なんだ」

『ボクとお前はハジメマシテだ。嫌ならさっさとボクが知ってる獄寺を返してくれない?』

「…ったく、こんなムカつくやろーだったのかてめぇは」

真顔で珈琲を渡すと苦笑された。
確かに彼は獄寺隼人だ。だが10年という月日で離れた相手ではもはや別人としか思えない。

少しでも心を落ち着かせるように獄寺がいるソファーの向かい側に腰を沈め珈琲に手を伸ばす。

『まずひとつ。あんたのいる未来にリボーンは存在していない、そうでいいか?』

「…ああ」

『そして綱吉も存在していない』

「…!」

『綱吉が消えたあと10年後は現れなかった。言い訳は聞きたくないけど、何故?』

「……」

獄寺は黙ったままだった。
何度も問いつめても口を開くことはなかった。
珈琲も冷めてしまい未来で起きている現実も嘘のように思えてくる。

「…どこにいくんだ?」

ソファーから立ち上がり部屋のドアノブに手をかけると何処か悲しげな声が聞こえてきた。

『あんたが整理つくまで時間潰してくる』

「…そうか」

いくら何でも落ち込み過ぎじゃないのか…?
まぁリボーンも綱吉もいない未来なら仕方ないのだろう。

「雪兎」

『何だ』

「…死ぬな」

その言葉の意味がわからないままボクは家を後にした。

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