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「10代目は敵を倒してすぐに気を失ったんです!!」
「みんなは!?」
「大丈夫です。全員無事っスよ」
ここは白い空間だった。複雑な機械が設置された部屋、ベットに敷かれた白いシーツから病室のようなイメージを受ける。
「来ちゃったんだ!!京子ちゃんが過去から!!」
ベットから飛び起きるように上体を起こした綱吉は叫んだ。胸部から左肩にかけ包帯が巻かれている。
「…そのことなんですが…笹川だけじゃないんス…」
あまりの慌てように驚きつつ獄寺は静かに頷いた。獄寺の座っている椅子の下には消毒液や絆創膏、包帯などの空き箱が散乱していた。
「そ、そんな…!!みんなも10年前から!??」
すがりつくように綱吉は獄寺の腕を掴む。頭の中で鮮明に出来事が蘇った。
ボンゴレ最強の守護者であるヒバリを捜すためアジトから地上へ出たのはよかったが、ミルフィオーレのブラックスぺルに襲われ負傷した。
恐怖と混乱と、京子の出現によりプレッシャーは重くなる。
「どーやって全員10年バズーカに当たったのかいまいちわからなくて…どいつも背後から…」
「そんな…た…大変だ!!ダメだよっ!!みんなこんなところにいちゃダメだ!!こんな所にいたらみんな…みんな殺されちゃうよ!!」
「じゅ…10代目!!落ち着いて下さい!!」
まるで自分が責められている、そんなふうに感じとってしまった獄寺は酷く傷ついた顔をした。
それに気づかないのか綱吉は自分が一番傷ついているような顔をした。
「いっ!」
「大丈夫スか!?」
傷が疼き鋭い痛みが体を走る。だがそんな痛みも忘れてしまう声が聞こえた。
「いやですこんなの…10年後の世界がこんなデストロイだなんて…」
「ハル……!」
リボーンの説明を受けて現実をうまく受け入れられなかったハルは入室口で泣きじゃくっていた。
その隣では寄り添うようにハルを宥める京子の姿がふたりの目に入る。
あれだけ怒鳴るように声をあげたのだ、綱吉の声は多少なりふたりに届いていただろう。
それがより綱吉焦らせ、ハルと京子は不安を募らせた。
「ツナく…」
顔を真っ青にした京子は名を呼ぼうとしたがあまりにも弱々しく消えてしまった。
「ツナさーん!!ハルは、平和な並盛に帰りたいです!!」
駆け寄ってきたハルの言葉に綱吉は言葉をなくした。京子の目にも涙が浮かんでいる。
帰りたがっている、ハルも京子もみんな並盛へ。
「ハル、京子こいつを飲め。おちつくぞ」
足音が聞こえハーブの香りが室内に充満した。
リボーンの両手にはハーブティーがあった。それに気づいた京子とハルはお礼を言い受け取る。
リボーンについて来ていた山本は緊迫した雰囲気に気づき何かを考えているようだった。
「リボーン!!」
「お、もう立てるようになったか」
「オレ…」
【〜?〜side】
室内から綱吉の声が聞こえた。
聞き慣れた声よりも高く幼い印象を受ける。それもそのはずだ、懐かしい綱吉なのだから。
入口のすぐ隣。通路の壁に背を預け息を殺し僕は声に耳を傾けた。
綱吉を含めた守護者たちがこの世界に来ていると情報が入った。だから確かめにきたのだ。
「帰さなきゃ…みんなをこんな所にいさせられない!なんとしても過去に帰さなきゃ!!」
荒い呼吸。彼はかなり焦っているようだ。冷静さを失い、ただ皆を帰すことだけを考え現実を見ていない。
考えようとしていない。
「もう生きのびるとかそんな問題じゃないよ!!そんな問題じゃ!!」
「お…おいツナ!」
「落ち着いて下さい10代目!」
声からして獄寺と山本は落ち着いているようだ。
けして混乱していないわけではない、ただ取り乱している綱吉を目の前にしては取り乱したくても出来ないのだろう。
「だいぶ錯乱してるな…」
「ちっ違うよ!!もうここで守護者を集めるとか!!そんなのんびりしてる場合じゃないっていってんだ!!」
それが錯乱していると言うんだよ綱吉。僕は話を聞こうとせず言葉をぶつける綱吉に小さく溜め息をついた。
「守護者を集めるのは避けて通れねぇぞ」
その通りだ。ボンゴレリングが今回の鍵となる。
破棄されてしまった僕らのリングはここになくても、昔の僕らならば持っている。どうしてもリングが必要だ。
手にはめられた幾つかのシルバーリングを眺めた後、僕はその場を後にした。
『敵は正一じゃない、白い悪魔だよ綱吉』
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