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【〜?〜side】


君がいないこの世界はあまりにも広く空しい。
空しすぎて切なくなる。

綺麗だった青空は酷く歪み何もかもを吸い込んで闇に染まる。
美しく瞬いていた星たちは自我をも忘れ狂いやがて光を失い消滅する。

降り止むことのなかったあたたかな雪は降り止むことのない吹雪に変わり
心をも凍えさせてしまうのだ。

溶けることなく降り積もる白く淡いものはなくなってしまった。

僕の弟はひとりだけ。かわりなど世界中を捜しても見つかりはしない。


帰っておいで。僕の弟





目立つ勢力ではなかったはずのあのファミリー。
しかし今となっては驚異的存在となり僕の所属するファミリーを脅かしつつある。いや、もう手遅れといっていいのかもしれない。ボンゴレは沈みかけている。

単独行動になるのだがミルフィオーレの資料をかき集めて内部の構成などを調べた。
何回かファミリーの振りをして忍び込んだりもした。
だがやはり上層部の機密はガードが堅く、手に入れたい情報は手に入れることは出来なかった。

はっきり言えば白蘭の戦闘データのことだ。でも機械のプログラムに細工というプレゼントしてきたからよしとしよう。
更にはある重大な装置にもオリジナルプログラムをプレゼントしてきた。
雪兎がこの世界にきた時に混乱しないようにだ。
きっと誰かに説明を受けるはず。正一たちに黙って付け加えてしまった。
怒るだろうなぁ正一。

更に数日後。

沢田綱吉が殺されたのを聞きつけファミリーのもとへ戻る。死因は射殺だ。

部屋に温度と言うものはなかった。
扉を開ければ顔に傷一つついていない彼がベットに横たわっている。

手を伸ばして頬に触れてみたが、青白くなってしまった肌は冷たかった。

ああ、死んでしまった。

人の死などいくつも見てきた。幼い頃から赤ん坊から老いぼれた人間までずっと見てきた。
何も思わなかったのに、むしろ喜んでいたぐらい。

しかし何故これほどまでに死が許せないのだろう。悲しみや怒りと言うよりも不思議なものがこみ上げてきた。

それを喪失感だと言うことに気づいたのはまだまだ先のこと。



並盛に戻り、思い出に浸る僕の邪魔をする下っ端を片付けていたら、ある情報源から聞かされた。

沢田綱吉がいると。

情報源を疑うわけではないが確かめるためにボンゴレ10代目沢田綱吉のアジトへと足を運び様子を窺うことにした。

確かに存在していた。10年前の幼い彼。獄寺隼人、山本武、そして懐かしいアルコバレーノの姿を目にした。

どうして彼らがここにいるのだろうか。だが好都合、彼らはリングを持っている。リングがなければ始まらない。





『やぁラル・ミルチ』

「!?」

彼女は長い黒髪とマントを揺らしこちらに振り向いた。

「な、何故お前が、いつからいた!?急に現れるなと言っただろう!」

けして広いとは言えない彼女の部屋に動揺を隠せない声が響いた。
ダンボールが積み重なっているこの部屋は温かみがない。

『そうだね、君が写真を懐に入れたところからかな』

「このっ…!」

壁に寄りかかっていた僕に彼女は決まり悪いと睨みつけてきた。気づかないふりをして唇の先をつり上げてみたら溜め息を疲れてしまった。

「まぁ…いい、それで何のようだ。消息を絶っていたお前がここに来たんだ、何かあるのだろ?」

やはり彼女は感が冴え冷静だ。どんな状況にも考えることを止めない一匹狼。
さすがはイタリア特殊部隊の教官とでも言っておこうか。

「下らないことを考えるな、さっさと言いたいことを言え」

『手厳しいね。…じゃあ早速だけど彼らに見込みはあるかい?』

「見込みはない」

彼らと言うだけで沢田綱吉たちだと意味は通じたようだが、またキッパリと言われたものだ。
今の言い方ではオレは鍛えないとまで付け足されたように聞こえる。

「見込みのないガキの相手をしている時間はないんだ」

言い方は違えど鍛えないと言うことなのだろう。しかし今は彼女が適任。

『彼らは君が思っている以上に力をつけるよ、断言してあげる』

「それはお前のあいつらへの情か?」

『好奇心だよ』

例え今は弱者でも将来、未来では強者になるかも知れない。人は変わるものだとわかった今だからこそ、そう思える。
現に彼らの未来…僕にとって今現在、確かな力を彼らはつけた。特に綱吉、そして骸に彼も。

『またね』

「もう来るな」

『綺麗なものは僕の目の保養になるのだけれどダメかい?』

「じょ、冗談じゃない!お前の目は節穴だ」

彼女は僕に背を向け早足で部屋を出て行った。どっかの誰かさんと同じで彼女は照れ屋。
本来の姿を教えてくれた最強のヒットマンの顔を思い浮かべてしまった。

部屋の外で綱吉たちの声がしたが僕は静かにその場を後にした。

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