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「なっ、なんなんだよてめーは!?」

『僕だよ』

「そういう意味じゃねーよ!だから、何でてめーが此処にいるかって聞いてんだよ!」

僕はあれからいろいろと考え過ぎてしまっていたようだ。これはゲーム。
だから気落ちしてる場合じゃない。
ここに雪兎はいないけれど過去の雪兎は生きている。まだゲームは始まったばっかり。
だから楽しまなくちゃね

『ね、隼人』

「何が、ね、だ!」

資料室を覗いてみたら隼人が黄昏ていた。何か悩みでもあるのだろうかとじーっと見ていたら耐えられなくなったのか隼人が怒鳴った。
隼人はソファーにドカッと座り足を組む。

『そんなに怒らないで。僕が何をしたって言うのかな』

「だぁー!!てめーは人の話を聞きやがれ!!!」

『いいよ、言ってごらん?』
聞いてあげる、そう付け足したら彼は僕と目を合わせ口をもごもごさせた。
赤くなったり青くなったりする彼。次第に瞳は潤んでいく。

「……10代目ぇぇ」

ソファーの上でうずくまる彼は泣きそうな声で唸った。それほど綱吉が好きなのかな君は。
でもどうやら本調子ではなさそうだ。
かと言って元気付けるような言葉なんか言わない。
僕が言ったって裏目に出てしまうだろう。

「ハヤトを虐めないでくれないかしら」

『心外だね』

女性にしては長身のシルエットをみつけ僕は肩をすくめ笑った。

「アネキ!?…ふげぇ!!」

顔をバッと上げた隼人は変な声を出して意識を飛ばした。
ピクピクと動く体。痙攣を起こしているのだろう。

『貴女が虐めてるんじゃないのかな』

「あら?あなたに言われたくないわ」

しかし久しぶりに隼人の死にそうな顔を見た気がする。何だかボンゴレが壊滅していない頃が懐かしい。

長髪を揺らしながらビアンキは隼人の頭を優しく撫でた。
確か二人は義姉弟で父親との血の繋がりしかなかったはず。だがやはりどんな形であれ姉弟、ビアンキは隼人が心配なのだろう。

『それで僕に何の用ですか。‥僕に逢いにきてくれたのなら話は別ですけどね』

「私にはリボーンしかいないわ」

『ふふっ‥本題に入りましょうか』

ビアンキは気を失っている隼人の隣に座り、僕は向かい側のソファーへと身を沈めた。
確かビアンキはフゥ太とともにミルフィオーレの情報を集めていたはずだ。
帰ってきたと言うことはそれなりの情報を手に入れたとして考えていいのだろう。

『入江正一が日本にいるのだろう?』

「えぇ、あとγもよ」

『γ?誰だいそいつ』

ミルフィオーレは全17部隊、その中でAランク以上の隊長は6人。
日本を任されているのはその中でふたり。
入江正一以外興味がなかったため僕は他の奴らの名前は知らない。

「あなたはγを見たはずじゃなかったかしら?ハヤト達と戦闘になったって聞いてたわ」

『…あぁ。あの金髪の彼ね』

そう言えば雲雀に敗北した男がいた。まぁ…雲雀に負けた時点で興味なんて微塵もないのだけれど名前ぐらい覚えておこう。

『ミルフィオーレは今このアジトを探しているのだろう?まだ時間はあるのかな』

「そうね、暫くは大丈夫だと思うわ」

『ふーん…』

「でも早くみつかるかもしれない」

溜め息まじりの言葉に『そうだね』と返答をした。アジトが見つかったら大変だ。
しかし彼らがこの限られた時間で何処まで強くなり匣を使いこなせるかが見ものだ。

「それよりもあなたに言いたいことがあるの」

眉間にシワを寄せながら隼人の頭を優しくなでる彼女。
まだ他に話があったのか、立ち上がろうとしていた僕はもう一度ソファーに腰を落とした。

『出来るだけ手短に頼みますね』

「あら、冷たいのね」

サラッと口にした彼女からは微塵もかまって欲しいなどという雰囲気はない。微笑さえ彼女は僕に絶対に向けはしない。

『そっくりそのまま貴女に返そうかな』

「あなたに言われたくないわ、お互い様よ。それにあなたよりはずっといいと思うわ」

『へぇ…』

優しいか優しくないかなんてどうでもいいさ。

『それで、何?』

「ハヤトの面倒は私がみることにしたの」

『貴女が…ですか』

「えぇ。だからあなたには手を出さないで欲しいの」

これからの戦いに備えそれぞれ過酷な特訓が始まる。綱吉ならばきっとラルが、山本ならリボーンが。
そう思うと彼女が隼人の指導者となるのは自然なのかもしれない。

『手を出す気はないよ。貴女にも考えがあるのだから』

「…そう」

ビアンキは一呼吸置いてから静かに立ち上がり背を向けた。
嵐の波動が強い者同士。匣についてもやはり彼女が適任となるだろう。

ビアンキの姿が見えなくなり僕もこの場を後にすることにした。

『起きてるならさっさと部屋に戻りなよ』

「…!」

肩をびくりと揺らした隼人をみて僕はゆっくり自室へと歩き出した。

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