ME book
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『お嬢様、アフタヌーンティーのお時間です』
「うん!ありがとう」
私は執事。笹川家にお仕えして早10年。
私を拾ってくれたお嬢様のために今日この日まで尽くして参りました。
そしてこれからも尽くしていきます。
幼かったお嬢様も立派なレディです。
『今回はチョコレートソースに拘ってみました』
「このケーキとっても美味しい!」
京子お嬢様の笑顔を見るのは最早日課、私の楽しみであり癒やしなのです。
ここの生活にも慣れました。
「リアスはいるかー!!」
突然大声を上げ走りよってくる了平お坊ちゃん。灰色のベストが揺れる。
あぁ、そんなに急がなくとも私は逃げませんよ。
「どうしたのお兄ちゃん?」
『落ち着いて下さいお坊ちゃん』
「ぬっ…話があるのだが…」
おや?いつもならばその呼び方を嫌がられるのに…。大事な話なのでしょうか。
お嬢様の向かいの椅子を引き「こちらへ」と言うと了平お坊ちゃんは慌てて座った。
『お話とは?』
「あぁ、それなのだが海外旅行へ行こうと思うのだ!」
『それは良いお考えです。出発日はお決まりでしょうか?』
「明日だ!」
……… 明 日 ?
そよそよと風がふき私の髪を揺らした。
またこの方は…全くをもって予想外の答えをすんなり言ってくれますね。
目の前ではガッツポーズをしキラキラとした目で呆れている私を見る主人。
隣にいるお嬢様もお坊ちゃんの言葉に驚いたようだ。
『でしたらゆっくりしている時間はないようですね。直ぐに手続きをして参ります』
「いやリアスはいいのだ」
ストップ!と目の前に出された手のひら。
『しかしそれでは間に合いませんよ?』
時計を見て時間がないことを確認するがお坊ちゃんは首を振る。
「リアスは留守番だ!たまにはいいだろう。休め、抵抗はするな執事なのだから!」
…おかしいですね。
今幻聴が…
「よいのだよいのだ」
何が宜しいのでしょうか。私は仕える為にあるもの。仕事がなければ生きている心地がしません。
『お嬢様もですか…?』
助けを求めワザと涙ぐむ私にお嬢様は困ったように眉を寄せた。
片膝を地に、お嬢様のお手を拝借し懇願するが首を縦には振らない。
「…ごめんねリアス」
『そんな!お嬢様…』
「大丈夫だリアス!お前を知り合いの屋敷に紹介しといてやったぞ」
お嬢様と離れるなど癒やしを手放すと同じ。しかしお嬢様をもう困らすことは出来ない。
帰ってくるまで辛抱ですね…
『…わかりました言うとおりに致します。ですがいろいろと無茶をなさらぬようお気をつけ下さい、お嬢様が悲しまれます』
「あぁ!極限に任せろ(笑」
……その笑顔が私を心配させるのです。
「じゃあリアス、行ってくるね!」
そして次の日。私を置いて主人一家は日本を飛び立って行った。
残された私は簡単にまとめた荷物を持ち、小さな地図を片手に街を歩き回った。
『ここが私が仕える屋敷…』
そしてたどり着いたのは笹川家よりも大きなお屋敷。
「まてっつってんだろがぁあ!」
ガウンガウンッ!!
「ヒィィ!落ち着けってリボ‥」
ボフッ
ドアが急に開いたと思えば中から人が飛び出してきた。しかも私の胸にダイブしてきたので思わず抱き止める。
「え?え?」
『おや?想像していたよりも随分と可愛らしいお坊ちゃんですね』
「え、ぇえぇええ?!///」
「…お前は誰だ」
少年はチャキッと銃を構える。
抱き止めていた青年を地面に下ろしゆっくり頭を下げた。
『申し送れました、私は今日から皆様にお仕え致しますリアス・レスロック。以後お見知り置きを』
呆然とするふたりの主
ニッコリ笑う執事
爽やかな風がその場を包む
それが坊ちゃんたちとの出会いだった。
(ところで何故追ってたんです?)
(こいつが資料の漢字が読めねーって言うから)
(…おや。)
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