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「で、君達は…匣がどうやってできたか知っているの?」

雲雀の問いに綱吉は首を横にふるがラルは腕組みをしたまま説明をし始める。

自然の中にあるカタチから兵器を作れないか。

4世紀前の生物学者ジェペット・ロレンツィニが残した設計書を元に3人の発明家、イノチェンティ、ケーニッヒ、ヴェルデが完成させたもの。

生物を模したオリジナル、そして保存用の匣、道具や武器の匣をも開発した。

だが3人の科学者のうち2人が変死し、その後生き残りのケーニッヒは地下に潜り、今も匣の研究を続けている。
ただしできたものは闇の武器商人に流しているらしい。

「…ーこれがオレの知る最も有力と思われる匣の情報の全てだ」

「ああ、間違ってはいない」

少し引っかかる言い方をした雲雀にラルが顔をしかめる。

「だがどうして匣ができたのかという問に対する本質的な答とは言えないな」

雲雀の質問は匣が誰によって作られたかを答えるものでも歴史のような過程でもない。
顔をしかめていたラルは納得出来ないのかさらに眉を顰める。

たしかに匣の情報など誰がどう調べても決まりきった、皆が既に手に入れているものしか出てこない。

「匣を現在に成り立たせた本当の立役者はジェペットでも優秀な科学者でもない。偶然だ」

雲雀の言葉を理解出来ないのは当然だ。この匣兵器が偶然できるなど思いもしない。

「ぐーぜん?それって…何となくできちゃったって…ことですか?」

フゥ太が戸惑いながらも質問をすると草壁が口を開く。

「世界的な大発見や大発明には発明家の身近に起きた偶然がひらめきを誘発してできたものが少なくありません」

匣もそんな偶然により出来た。
…そういうことなのだろうか。

「優羽はどう、何か思うことはないかい」

突然雲雀に話をふられた。
流石に直ぐには答えられず少し間をあける。

『…匣には謎が多すぎる。例え本当に偶然だとしても、僕はそれを偶然と素直には呼べない』

そもそも偶然などそう簡単におこるものではない。

「匣開発においては偶然が尋常でなく頻繁に起きている。優羽がそう言うのも無理はない」

『ここまでくれば何かに、否誰かに仕組まれてても可笑しくない…なーんてね。今のはただの戯れ言として受け取ってくれ』

「どういうことだ!?」

「我々はそれを調査してるのです」

ラル、フゥ太、そして綱吉も混乱しているようだ。

「知るほどに謎は深まるばかりでね。沢田綱吉、明日も楽しませてくれよ」

ヒバリは少し楽しげに綱吉を一別したあと頭上を見上げる。勿論そこにはぶつけ合ったハリネズミがいる。

「覚えておくといい。大空の炎はすべての属性の匣を開匣できるが、他属性の匣の力を引き出すことはできない」

言い終わると同時に「キィィ!」と言う鳴き声が耳に届く。

「ツナ兄のハリネズミが取り込まれてる!!」

「!!」

鳴き声はやがてプチンと糸が切れたように止み、雲雀のハリネズミの針により姿を消した。
今雲雀が言ったように、その他の属性、つまり雲雀の匣の力を全て引き出すことが出来なかったために起こったことだ。

それを確認すると雲雀は背を向けエレベーターへと歩き出した。

「悲観することはないよ、大空専用の匣も存在するらしい」

哲、名を呼ぶと草壁は返事をして雲雀の後ろをついていく。その後ろ姿を見ていたら雲雀が足を止め振り返った。

「優羽」

ついてこいと言うことなのだろうか。しかし僕はゆっくり首をふった。

『もう少しここにいるよ』

「…そう」

少しだけ眉を顰めた雲雀はエレベーターから出てきた山本の隣を通りこの空間から出て行った。
顔にはあまりだしていなかったが確かな綱吉の手応えに満足したようだった。

「遅いから捜したぜ!!」

「待たせて悪かったな」

どうやら山本はリボーンを捜してここに来たらしい。

「ツナも元気そーじゃねーか!いやーよかった!!」

「んじゃおまえの修業再開すっぞ山本」

「ああ」

そう笑顔で言ってのけるふたりだが、僕の目に映る綱吉は元気と言えるものではない。
勿論ボロボロだ。殺されかけていたぐらいだ。
元気そう、その言葉が出てくるのは彼なら勝つという信頼や自信か、はたまた山本の純粋なる天然発言か。
どちらにしても山本らしい答えになりそうだ。

「沢田おまえも休んでる暇はないぜ」

うつ伏せに倒れている綱吉の横に立ったラル。
だが先ほどとは違い目の中に炎を灯したような煌めきがあった。
どうやら雲雀との戦いを目の当たりにし指導者として火がついたようだ。

「一刻も早くVer.V.R.も扱えるようにしなくてはまた雲雀に…」

『本人は夢の中だね』

ぐっすりと眠りについている綱吉にラルは今日初めて優しい笑みを見せた。

「…仕方ない奴だ、あの試練の後だ…無理もないな」

とでも言うと思ったか!!

もうラルを止めることなど出来ない。
僕は頬が赤く腫れ上がるまでビンタされ続ける綱吉を見て苦笑。

女は怖い

誰かが言っていた言葉を思い出す。今なら素直に頷けそう。

こちらまで頬が痛くなりそうな光景から時々目をそらしながらも、綱吉を確認する。
何だかんだで今綱吉は生きている。

今回は…褒めておこうかな。




ビンタが終わった後、僕は第一医療室へ綱吉を運ぶために抱きかかえた。

『…頑張ったね綱吉』

気のせいかな。今彼が嬉しそうに笑った気がした。
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