U

□Z
1ページ/5ページ


数日が立った。

あれから僕は綱吉、彼と話しをしていない。それどころか姿すら見ていない。
彼は僕をあきらかに避けていた。

避けられることに対しては何も思わない、否思えない。
聞かれても話すことが出来ないから。


ねぇ、もしも消えていたのが僕だったのならば雪兎、君はどうしたかな?
雪兎のことだから僕のような馬鹿な真似はしないんだろうね。


黙って皆の前から姿を消す


出来れば僕もそうしたかったよ。…でもそうも言ってられないだろう?

世界から逃げてはいけない。世界からは逃げられない。

そうだろ?
 
 

【山本side】

久しぶりの長い休養に身体が軽くなった気がした。よくわかんねーけど未来にきて、強いやつらと戦って。
まだまだオレは弱いことを知った。

雨の守護者としてスクアーロとの戦い勝ち、自信をもち、少し天狗になっていたのかもしれない。

その結果がこの怪我だ。
だけど、まだ強くなれることを嬉しく思うオレがいる。

野球も好きだ。マフィアごっこも好きだ。時雨金時を使いこなせるようになりたい。
でもオレだってもうわかってる。これがマフィアごっこではなく真面目な話だってことくらいとっくに気づいてんだ。

ヴァリアー戦での優羽はオレの知るあいつではなかった。あれはリングをかけると言うより命をかけた戦いだ。
そして笑ったまま人を殺した。どうやったのか手口がわからないオレにはあまりにも異常過ぎて声すら出なかった。
今思えば、あいつにとってあれは…

「おい、どーした」

「ん?何でもないのな。獄寺は身体大丈夫なのか?」

「あたりめーだ。寝すぎて体がなまってんだよ」

ん〜っと伸びをした獄寺は嬉しそうにニッと笑った。この修業をする大きな空間では俺たちの声はちっとも響かないけどしっかり声は届く。

ボンゴレが誇る日本地下アジト。本当に10年後なんだと実感した。
最初は混乱していたけれどオレがしっかりしないといけない。直ぐにそう思えるようになった。

ツナはオレ達を帰さないといけないと焦り混乱して、獄寺はそんなツナを心配そうに見ていた。

空気がピリピリしていた。

オレだけでも、冷静に。
みんな焦ってたってどうにもならない。だからオレは笑う。笑ってみんなに元気になってもらう。

まだマフィアごっこだと思っていた頃、ツナに「山本が羨ましいよ」と言われたことを思い出す。
羨ましいなんて言われるオレじゃない。何も出来ないから、オレは笑っている。
こんな時雪兎がいたらオレを助けてくれるんだろうな。
例えトゲのある言い方でもみんなを元気にしてくれる。
それで最後にどこか張り付いた笑顔でオレに向かって言う。

「Niceだ山本」って


オレのことわかってくれてる。
期待なんて重いことは言わねーけど、だけどアイツが来てオレは、オレ達は変われた気がした。

「修業頑張らねーとな!」

声を張り上げ、いろんな意味を込め放った言葉。

「おう!」

それをどう受け止めたのかわかんねーけど獄寺も声を張り上げた。

「2人とも!!」

設置されたエレベーターの扉が開きツナが飛び出してきた。ポケットに手を入れていたためバランスが取れず転びそうになったツナに思わず苦笑してしまった。

「よっツナ。今日からオレ達も修業復帰するぜ」

「ケガはもういいの!?」

それを聞いてツナは焦ったようにオレ達の腕に巻かれた包帯や絆創膏を見る。

「完璧っス!!体がなまって困るほどです!それにほら、オレ頑丈ですし」

ガッツポーズをしながら笑みを零す獄寺にツナはホッとしていた。
でも心ここにあらずって言うのか、よくわからないけれどツナの目にオレと獄寺が映っていないような気がする。

「3人揃ったな」

少し離れた場所から小僧の声がした。振り返ると小僧の隣には腕組みをしたラルがいて睨むような目でこちらを見ていた。

「予告通り本日より新しい修業、強襲用個別強化プログラムを開始する」

「個別…強化?」

「この10日間ツナがラル・ミルチに1対1で教えられたように、ひとりにひとりずつ家庭教師をつけ修業だ」

つまり個人にあった修業が出来るってことだと解釈した。

「例えばオレが鍛えるのは山本だぞ」

銃を構えた小僧はニッと笑う。少し予想外で思わず自分自身を指でさしてしまった。

「ヨロシクナー」

「え"!?リボーンが山本を!!?だ…大丈夫なの!?」

ツナ、それどういう意味なのな?

急に叫びだしたツナに小声で言ってみたらツナはピシッと凍りついた。
その反応は優羽が時々みせる意味深気な笑みに怯える雪兎にそっくり。
隣にいた獄寺は何故か顔が青い。

「ハヤトの担当は私よ」

「ビ…ビアンキ!?」

「ふげぇ!!」

さらに顔を青くした獄寺はその場に倒れこんだ。右を向けば獄寺の義姉、ビアンキが腰に手をあて堂々と立っている。

「じょ…冗談ス、よねぇ」

ツナに確認するように途切れ途切れに言葉を繋ぐが、どうも冗談じゃないらしい。
ビアンキは右手の中指にはめたリングに赤い炎を灯した。

「やはり姉弟、私も嵐属性の波動が一番強いわ。そして修業が無事終わったらあなたにあるものを授けるわ」

微笑みから一転し、どこか悲しみに耐えるような顔をし付け足した。

「お父様からよ」

獄寺もパッと顔を上げビアンキの顔を直視した。

「ふごっ!」

自滅なのな。

「絶対ムリだよ!!中止した方がいいって!!」

「おまえは自分の修業に専念しやがれ」

慌てているツナに小僧が銃をむけ発砲する。

「おい…ツナ?」

大丈夫か?

その反動で数メートル後ろに吹き飛び倒れたが直後オレンジ色の炎が揺らめく。迫力が増し、目つきも違う。

「すげぇ10代目!」

「前とはまるで別人だな。また随分差ーつけられたぜ」

そう思っているうちに瞬時にラルの前へ移動するツナにまた驚かされた。スピードも上がっているようだ。

「はじめようラル・ミルチ」

「オレはおまえの指導を下りる。おまえはオレの思い描くレベルにまるで達していない」

ラルのその言葉にツナの目がさらに鋭くなる。

「短時間ではこれ以上のレベルアップも望めないと判断した」

「だが実際にここまで」

「おまえの力はこんなものではない!」

言葉を遮り断言したラルは真っ直ぐツナをみる。しかしその瞬間に突風とともに何かがツナをおそった。
何とか回避するツナに黒いスーツに身を包んだ男が無表情で言う。

「気を抜けば死ぬよ」

冷たい目をしたのはヒバリ。

「君の才能をこじあける」





まだツナも強くなれる。

やっぱりオレも負けてられない。

雪兎と、仲間と笑いあうために、強くなり生きる。


オレ…間違ってないよな

早くおまえにあいたいのな…
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ