ME book
□V
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『エスプレッソをお持ちいたしました』
そう言って机の上に置くとリボーン坊ちゃんは小さく頷いてからそれに手を伸ばした。
若くして、いや幼すぎる家庭教師。
流石と言っていいのでしょうか、仕事は迅速であり山積みだった書類は全て整理されています。
ですがこの子供が、綱吉坊ちゃんでも読めないような、いや、綱吉坊ちゃんは元々勉強は出来ませんでしたね。
リボーン坊ちゃんは難しい言葉をすらすらとお読みになる。
やはり主は非常識です。
「おい、オレをそんな目でみんじゃねーぞ」
『おや、これは失礼致しました。どうかお気になさらずそのまま銃をおろし下さい』
「気にするに決まってるだろーが」
チャッ‥と構えられた銃を見ながら私は口元を押さえながらふふっと笑う。
折角お褒めしていたのに本当に非常…ゴホン。
銃で撃たれ死ぬことはありませんが痛いのは嫌です、何より私の燕尾服が穴だらけになるのには抵抗があります。
これは元主に頂いたもの、大切にしなければなりません。
「今日何か予定あったか?」
『いえ、特にはございませんが午後には隼人坊ちゃんと武坊ちゃんがお帰りになられます』
「そうか、今日だったな。部屋の掃除は任せたぞ」
『かしこまりました』
*****
『それではトワ、お願いします』
「俺かよ!!?」
隼人坊ちゃんの部屋につき私はトワに雑巾やらバケツやらモップやら道具を押し付けた。
物凄く嫌な顔しましたね。減給でも考えましょうか…。
『私には他にやることがありますので宜しくお願いします』
にっこりと笑う反面、頭の中でいくら減給しようかと計算する私。
あまり楯突くと凄い金額になりますよ。
私は優しくなどありませんから。
「俺シェフだぜ?シェフに掃除やらしていいのかよ」
『貴方暇でしょう?』
「おう、暇だ」
アホですね彼は。減給されるとも知らずに。
『それでは』
「え、おい!リアス!」
アホに少し時間をとられましたね。武坊ちゃんの部屋はチェルに頼んであるのでまず大丈夫でしょう。
あれでもハウスメイドですから。
さて、次は問題児のところへ急がなくてはいけません。
早足で長い廊下を進む、そして足音が大きくならないよう階段をおりる。そしてドアを開け私は中庭に来た。
中庭はやはり笹川家よりも広く美しいものだ。
何より完璧なまでに草花の手入れがされている。
元の世界では地獄絵図のような枯れ果てた庭を何度も見ましたが、ここは素晴らしいの一言。
何も言うことはありません。
バラ園に入って行くと小さなベンチが置かれていて、そこには独りの少年がいつも寝ています。
『アシュ起きなさい』
紫色をした髪を揺らす小柄の少年は息を小さく漏らしたあとうっすら目を開けた。
「…おはよーリアスさんグットモーニング」
ふにゃっと笑う彼の名はアシュレイ、通称アシュ。この屋敷の庭師です。
『おはようではありませんアシュ。いつまで寝てる気なんですか貴方は』
伸びをしながら欠伸をする彼はん〜と考えたあとまたベンチへと転がる。
「リアスさんが、起こしに来てくれるまでかなー」
『では干からびていてもらいましょうか』
「リアスさんおんぶプリーズ」
急に立ち上がったと思えば背中にしがみつくアシュ。いったい貴方の精神年齢いくつなのですか。
そう思いながらも彼を背中に背負い私はゆっくりと歩き出す。
ここに置いていけば本当に屋敷に帰ってきませんからね。
えぇ、3日間ほど放置したこともあります。
よく生きてましたね彼。
この庭は全て彼ひとりに管理されている…本当に信じられません。
「あ、隊長!除草剤なくなっちまいやしたっす!」
『明日には届くよう注文しておきます』
「ありがたき幸せナリ」
私はこの時気づきませんでした。
空き部屋かと思われていた部屋の窓からある青年がこちらを見ていたことに。