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「あんなことって…あるのかな…歴代ボンゴレに…初代ボンゴレ…」

『そんな思いつめた顔をしてどうしたんだい』

「!?、優羽さんいつの間にっ!?」

『さぁ、でも君の声が聞こえたから』

ボンゴレのアジトの男子トイレ。大きな鏡に映った綱吉は見つめていたリングから手を放し、壁に背を預けていた僕をみつけ苦笑した。

「あの、まだ聞きたいことがあったんです」

『雪兎のことだね』

まだ聞かれることは分かっていた。だから僕はここに、綱吉のいるここにきた。あれだけ一方的に話したのだから言いたいことのひとつやふたつあるだろう。

「その、優羽さんのせいじゃないと思います」

『何がかな』

綱吉は拳を握り真っ直ぐ僕を見た。僕は綱吉の横へ移動し鏡に映った自分自身を見る。

『どうしてだい』

「優羽さんが要求されたのと雪兎君が、い、いなくなっ……兎に角関係ないと思うんです。…オレがいなければ…雪兎君は…」

『君は本当にそう思ってるの?』

「でもオレを庇って!」

絶望を胸に怒鳴った彼は震える拳を握りしめた。

『雪兎の意志を無視して、それで君はどうしたいの。自分だけが死ねば良かったとでも思っているのか?』

耳に届いていた自分の声は冷たいものだった。
内心慌てて彼の顔を確認すれば、勿論そこには泣きそうな顔をした綱吉がいた。
言い過ぎた、大人気ないことをした。

向かい合い肩に手を乗せると彼の体はビクッと震えた。

『…いいかい綱吉。雪兎は自らの意志で動いたんだ。分かってあげてね』

「…っ」

『あと、僕のせいで間違いないんだ。僕の身柄が要求されて雪兎は本気でミルフィオーレを潰そうと独りで乗り込んだりしてたんだ』

「ひとりで…?」

目を見開いた彼は心底驚いた様子だった。

『笑っちゃうよね。情報もなしに暴れて、何度もボロボロになって帰ってきたよ』

「雪兎君…」

『気づいたらミルフィオーレを脅かす危険な存在として目をつけられ、ボンゴレ関係なしに命を狙われてたよ。本当…バカなんだから…』

バカな子だ。自分ひとりでどうこう出来るものじゃない。
だが自由に身動きができるのは自分しかいないと分かっていたからこそ独りで行動した。
獄寺や山本たちを危険な敵本拠地に連れて行けるわけがない。

「オレはそのこと、知ってたんですか?」

『勿論だよ、雪兎は君に何度も説教を受けた。でも止めなかった』

「……ごめんなさい」

僕と目が合った瞬間彼は顔を真っ青にした。

『急にどうしたんだい?』

「…オレ、優羽さんの気も知らないで…八つ当たりとか…して…」

『それは違うよ』

何故か僕の方が綱吉と目を合わすことが出来なかった。。"本当は僕が八つ当たりをした。君は何も悪くない。ごめんね綱吉"

言いたくても素直な言葉は伝えられなかった。

ただ口にするだけなのに何故こんなにも恐怖を感じるのだろう。

「優羽さん…?」

『何でもないよ。それより歴代ボンゴレに会ったのかい?』

「…うん、でも考えてみたらみんなもう死んじゃって…」

『そうだとしても思いは残るんじゃないかな』

「思い?」

首を傾げた彼に僕は笑った。

『ふふ…僕もよくわからないや』

知り合いの受け売りだから。
僕も首を傾げたら綱吉も笑った。
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