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「鋼球をとめるなんて…」
ボロボロになった瓦礫が散乱したセンターの中。窓からボンゴレ側を見る千種は思わず言葉を漏らした。最後の特殊弾がリボーンの手により撃たれたのだ。
綱吉は死ぬ気になり六道骸…いや、影武者に戦いを挑む。
『さっき沢田に会って来たのだろう?』
壁に背を預け腕を組んでいる黒曜生、優羽は俯いたまま汚れているソファーに座る本物の六道骸に話しかけた。
優羽の隣には並中の制服を着た雪兎が微動だにせず俯いたまま静かに座っていた。
「ええ、ただ予想以上に弱く小さな男でしたので驚きましたよ」
骸の言うとおり神の采配とうたわれ人を見抜く力に優れているボンゴレ9代目が選んだ後継者。
精神的に何かしら強いものを持っていると思うが彼はあまりにも無知だ。
「しかし最後の一発だったとはまんまと術中にはまってくれましたね、これでまた一歩ボンゴレ10代目の略奪に近づきましたよ」
外で闘っているランチアは援軍の中で一番強い者だと言うことはわかるのだが、どうみても自分の意志では闘ってはいない。
「彼は僕の先輩だった男ですよ」
『先輩?』
『北イタリアのマフィアだった男だよ』
優羽が答えをつけたすと
「おや、情報が早いですね」
クフフと目を細め骸は笑う。
『…ランチアの負けか』
しばらくした後沢田の前に膝をつくランチアがいた。
まさかランチアがやられてしまうなど思っていなかったため少し驚かされた優羽だが、とくに表情に出すことなく現状を見守る。
隣ではホッとしたように小さく息をつく雪兎。だがそれに気がついた骸からは笑みが消えた。
「骸様」
千種が骸からの合図を促すと骸はゆっくり頷く。それを確認した千種はスタスタと部屋を出て行った。
ランチアの口封じと始末のことであろうと即座に理解するふたりはまたマフィアが消えると軽く口元に弧を描く。
それをみた骸は笑みを取り戻し千種の攻撃に倒れるランチアをみていた。
そばにいる沢田は悲痛な声を上げてランチアの名を呼んでいたが今のふたりには何も響かなかった。
それほど"マフィア"の死はふたりには心地よいものだったのかもしれない。
『そろそろ、だな』
『そろそろ、だね』
「クフフ…」
静けさを取り戻した外からの風が黒く所々破けたカーテンを揺らす。
優羽と雪兎は一瞬だけ表情を変え空を見上げた。
「また会えてうれしいですよ」
広い空間、かつて映画館であった部屋に骸の声が響いた。
無駄に多いクッションがおいてあるソファーに座ったまま、そっと顔を上げると沢田が驚いたように声を上げる。
「君は!!、もしかしてここに捕まってんの!!?あ、あの人はさっき森で会った黒曜生の人質なんだよ」
ビアンキとリボーンに紹介する沢田だがビアンキは骸を睨みつけた。獄寺の姿が見えないのはきっと千種が相手をしているからだろう。
骸とボンゴレ10代目の折角の再会、特に意味はないが邪魔をされたくないのだろう。
「ゆっくりしていってください、君とは永い付き合いになる。ボンゴレ10代目」
ボンゴレ。その言葉を聞いた瞬間沢田の顔が微かに引きつり歪む。
「なんでオレがボンゴレって…?」
「ちがうわツナ!こいつ…!」
ビアンキは気づいたようだ。骸を見る目に益々殺気がこもる。骸に軽く笑みがこぼれ始めた。
「そう僕が本物の六道骸です」
「な…はぁー!!?」
『そして、僕の数少ない理解者』
「優羽さん!!?」
沢田の叫び声が響く中、扉が閉まる音が聞こえた。振り返れば
「フゥ太!」
生気のない瞳の少年がたっていた。
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