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「いや〜良い部屋だ、まだまだ小せえくせに贅沢な奴らだな」

ずかずかと部屋に入ってきてそう一言いった沢田家光は遠慮することなくソファーに座った。

「これまた座り心地も…まあ奈々の膝枕には負けるけどな!」

こいつは本当にボンゴレの話をする気があるのだろうか。妻の自慢でもしにきたに違いない、用意しかけた紅茶に手が止まる。
しかしテーブルを挟み対面するソファーに白い猫の姿がある、優羽は聞く気でいるようだ。
雪兎は自分が飲むから奴はついでだと言い訳をしながら彼等のもとへと向かった。

『早々にお帰り頂きたいところですがしょうがないので聞いてやんよオッサン』

「ああ、オレもあまり時間がないからな。単刀直入に言うぜ」

差し出された紅茶を香りも楽しまずに喉に流し込む男を呆れる。どうやら一分一秒でも多く最愛の妻の傍にいたいらしい。だが突然目つきが変わった。

「おまえらに雪の守護者になって欲しい」

雪…?果たしてそんなものがあっただろうか。ボンゴレリングは大空を始めとする7つしか存在していないはずだ。

「ここにそのリングがある」

懐から出されたのは箱だ。簡単に開かないよう鎖で厳重に巻かれている。

『…おまえらと言ったな、どういうことだ』

「わかって聞いてんだろ?そこにいるおまえもな」

家光の視線の先には先程から丸まって動かなかった白い猫がいた。猫は目を細めまるで笑っているようだ。

『おや…ばれていましたか。人は見掛けによりませんね』

「おまえにも雪の守護者になってもらいたい」

彼の眼差しは真剣でふざけている様子もない。しかし話はめちゃくちゃだ。
聞いたこともない話をされ聞いたこともない役職に就けと男は言う。しかもそれは遠まわしにボンゴレファミリーになれと言っているのだ。
はいそうですかと頷けるはずがない。

『もしそのリングが仮に存在しているとして…何故今まで誰も所持者がいなかったのです?どう考えても可笑しい話だ』

『しかもわざわざボク達のところに来たってのがどうも引っかかるんだよな』

「…それはボ『ボンゴレの最高機密だから言えないなんて言わせませんよ』

人でも猫でも変わらないこの威圧感。これが珀槻優羽かと家光はとんでもない男を相手にしてしまったと後悔するがそうも言っていられない。
これほどの適任者はどこを捜してもみつからないのだ。

息を整えた家光は覚悟を決めたように鎖を外し箱を開けた。そこにはハーフボンゴレリングがふたつ納まっている。未完成なリングはふたつとも似ているが僅かにデザインが異なっているようだ。どうやらふたりでひとつのリングではないらしい。
しかし何故他のリングとは別に保管されていたのか、気になることが増える。

「聞きたいことは山ほどあるって顔だな…まあそう焦るな。追い追い説明しよう」

『そうですね。でも先に聞いていいですか?』

「なんだ?」

『貴方はどうしてそのリングを恐れているんですか』

その言葉にピクリと反応した肩に優羽は思わずクスッと笑う。箱を持つ手の僅かな震えと鎖を外している間の大量の汗。
気を紛らわせる為の当初のふざけた物言い。優羽が見逃すはずがなかった。

「…降参だ」

『では予定通り洗いざらい吐いて貰いますね』

予定通りってなんだ、ヒクリと家光の頬が引きつった。

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