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『…頭痛い…』
目が覚めれば全身がだるい。頭も痛いし気持ちも悪い。おまけに昨日の歓迎会からの記憶がとんでいる。何といっても夢見が最悪だった。
まだ自分はアレに囚われているのかと思えば気分は沈む一方で自嘲する気にもなれない。
珍しく早朝に部屋を訪れた三浦ハルが何かを言って薬と水を置いて行ったが、ガンガンと破壊音のように響く痛みに負け全くと言っていいほど覚えていない。
薬は飲んでいない。それが毒だとか彼女を信用していないとかの理由ではない。
薬は嫌いだ。たくさん飲んだんだ、だからもういらない。
そんなのただの子供のわがままに聞こえると皆は言うのだろう。
だけど俺は子供のままでいいと思った。
『で…なんでアンタここにいんだよ』
動きたくないし喋りたくもないけれどベットから体を起こし俺は視線を送る。
そこにいたのは絞り切れていないタオルから水をぼたぼたとこぼす金髪の男。
『あーあ…誰だか知らないけど不法侵入かよ。しかもなに人の部屋汚してくれてんの?つーかここのセキュリティーシステムどうなってんの』
ああもう、頭痛いな。
「雪兎!オレ心配したんだぜっ!『くんな』ぐふ!」
男は目を潤ませながら飛びついてきたので迷わず足蹴した。
あまりのも急だったので今になって心臓がばくばくと音を立てる。なんなんだこの男は!そう思った瞬間足を掴まれさらに心臓が跳ねる。顔をのぞかせた男の顔は妙に整っていた。さらさらとした揺れる透き通った金髪が片目にかかっている。蹴って当たった顔や額は赤く染まっているがそんなことも気にならないほどのものだった。
「雪兎、もっと顔みせろ」
『はっ?えっ…ちょっ、え!?』
背中にまわされた手により距離が近づくと香水がふわっと香る。いい匂いだなんて思ったのもつかの間、男に抱きしめられている自分がいた。
『はははは初めてお会いしたと思うんですけど!ひ、人違いなんじゃないかと思うんですけど近っ!近いんであの、香水が、あのっ』
何言ってんだ俺は。何をテンパってんだ俺はしっかりしてくれオイ!!
名前呼ばれてんだから多分知りあいだろ俺のバカ!!
頭の中をぐるぐると駆け回る混乱という文字、そしてそれを促進させる香水の甘い匂い。
悲鳴が出そうな3秒前。
「会いたかった…オレの…」
顔を近づけて来る男に全身から汗が噴き出し身体が硬直した。こいつは何をしようとしている?俺に何を?
はっと視線が男の薄い唇にいった瞬間俺は真っ白なった。
終わった。何もかも…
だが全てを諦めた俺の世界は一気に輝きを取り戻した。
男の頭を掴む手とその後ろからの真っ黒なオーラ。男はギギギと血の気のない顔を後ろへと向けた。
「よ…よお」
『やあ跳ね馬、ごきげんよう』
美しい笑顔とともに頭が割れるような破壊音と悲鳴が木霊した。
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