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銃声が轟く。壁や天井、跳ね返すものが見当たらないにも関わらず不協和音のように音は反響し重なりあう。
あの男のように見えないだけであって案外すぐ近くに壁があるのかもしれない。転がる死体を見詰めそんなことを考えていた。

至近距離から頭を撃ったため鼻から上がない。飛び散った血肉は地面に点々と赤黒い模様を残している。
そう言えば顔をよく見ていなかった。突然の襲撃に気にする余裕はない。気紛れにその姿を凝視する。
散らばった長い綺麗な銀髪がある男と重なった。

『スクアーロ、なのかい?』

死体が答えるわけなかった。次に現れたのはベルフェゴール、そのまた次は跳ね馬ディーノ。
ひとり殺す度にひとり現れる。倒した数に比例し敵の力は格段に強くなっていくのを感じた。しかし倒せないレベルではない、マフィアは敵だ。
例え知った顔であってもボンゴレに深く関わらなければこういう運命もあったのだろうと思える。だいたい彼等はまやかしだ。気にする必要はない。

…ここまではそう思っていた。目の前に彼が立つこの瞬間まで。
まやかしの心臓を撃ち抜くと視界の端で黒い布が揺れた。ゆっくりと視線を移しその存在を確かめる。
見覚えのある顔が無表情で僕を見ていた。

『……君も…ここでは敵?』

そこにいたのは雲雀恭弥、その人だった。敵としてこのゲームに登場する彼等は見事なまでに表情を消している。
それはただのまやかしだからなのか、それとも僕の中での彼等と言う存在がその程度のものなのか定かではない。

『まさか君まで出てくるなんて思わなかった』

雲雀恭弥は赤く染まった地面をゆっくりと進み距離を縮めてくる。銃口を向けているにも関わらず止まらないその足は機械のような一定のスピードで真っ直ぐこちらに向いていた。
それにしても肝が据わりすぎじゃないか?恐怖と言うものがないのだろうか。まあどちらにしても特に関係はないけど。

『まやかしに興味はないよ』

この一撃で心臓を突き破る。敵は目前、ここでやらなければやられてしまう。そしてトンファーを振り上げるその腕は重力に逆らうことなく下ろされた。
吹き飛ばされる身体は血溜まりの中へと沈む。全身が痛みに悲鳴をあげた。見下ろす彼は追い討ちをかけるようにその足で腹を踏みつける。

僕は彼を撃てなかったのだ。
まやかしなのに、敵なのに、彼の姿が過去を思い出させる。
撃てない、撃てない、僕に彼を撃つことなんて

『できないよ…』

血の海に僅かに反射し映る自分の顔は酷く情けない顔をしていた。

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