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ダメだ、ダメだ、よりにもよって彼になんて。
「何をしているのです?このままでは殺されてしまいますよ」
殴られ蹴られ体は言うことを聞かない。避け続けるにもこのまま長時間続けば体力が尽きてしまう。
気絶させようにもこの銃以外ではかすり傷ひとつつかないようで事態は悪化するばかりだ。
なんの解決策も見つからないままの僕を笑いにでもきたのか六道骸が姿を現した。
『…そうだね、雲雀恭弥の前に君に殺されてしまうね』
折角彼を撒いたというのに六道骸に見つかってしまった。下手に動いては雲雀恭弥にも見つかってしまう。
そもそも僕に骸が撃てるのだろうか。彼を撃てないのなら裏切らないと誓った骸を撃つことなんて到底できるはずがない。
『…っ!』
「そうです、お逃げなさい。簡単に死んだらつまらないでしょう」
楽しそうだった。幸せだと今にも叫びだしそうなほど幸福に満ち溢れている、そんな様子だった。
爛々と輝くその瞳に僕は映っていない。写っているのは逃げるしか術を知らない弱者だった。
「クフフ…反撃しないのですか?優しさを通り越して甘いですよ。ここでは全てが敵ですから」
出会った当初はまだふたりとも幼かった。それでもお互いに不気味な存在だとわかっていて、笑みを表に腹の探りあいばかり。
正直あの時から嫌いだった。
「痛いですか?でもまだ早い、さあ立ってください」
何もかも見透かしたような目。不適につり上がった唇。恐怖をどこで落としてきてしまったのだろうか、骸は子供でありながら誰よりも異質な大人だった。
「隠れないでください、そうだ、見つけたら串刺しにしましょう」
君の考えてることが一番わからない。そもそも君の目に僕は写っていたの?
マフィアへの復讐心しかなかった君に情はあったの?わからないんだ君が。
「おや、ここもハズレだ。…次はここでしょうか」
君が何故僕に一緒にこいと言ったのだろう。心の底で誰も信じないと笑っていた僕に手を差し出した君は知っていたはずだ。こいつは信用出来ないと。
「おかしいですね、クフフ…次は当ててみましょうか」
現に僕は君を忘れていた。約束も記憶も全て忘れたと近づいた。
…僕は嘘をついたのだ。
実際は忘れてなどいない。君と離れた数年間、あの忌々しい日々を忘れたことなどない。
嘘に嘘を重ねそれを貫き通し誠とした。大事な弟の記憶までねじ曲げて。
なのに、どうして、こんな僕を受け入れたんだい?
君を試して遊んでいたこの大嘘つきをどうしたら側に置ける。
「見つけました、これで終わりです」
この答えを知らないで死ぬなんて、面白くないよね。
銃声が轟く。貫いたのは骸の身体。心臓を撃ち抜いたと言うのにゆらりと振り返った。
「何故だ…何故撃った!!」
憎悪。響く呻き声。
『君が幻覚と遊んでる間に知りたいことが増えてしまってね。早くここから出たくなったんだ』
「誰を撃ったのかわかっているのか!?六道骸を…!」
『銃でしか傷付かない雲雀恭弥。なのに君は槍で肌を切った』
「それは、ゲームが始まっていなかったから…!」
『違うね、ゲームが始まる前に現れた沢田綱吉は幻覚すら聞かなかった。君と違って』
「…この僕を殺すのですか?」
『何を言っているの?君は六道骸ではないよ』
「やめてください!僕達は仲間でしょう?」
『君が言ったんじゃないか、全て敵だと』
そして僕は彼の頭に槍を突き刺した。
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