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声が聞こえた気がした

誰かが確かに俺を呼んでいた

その誰かに俺はここにいると伝えたくて声を張る。
でも聞こえないのかずっと俺を呼び続けているようだった。



そういえばここはどこなのだろう。
あたりを見渡すと広がるのは赤。
壁、天井、床、全て赤で統一されていてどこか落ち着かない。

覚えているのはこの雪のリングをはめたところまで。この場所へいつ来たのかはわからない。
異変に気づいたのは今だ。

でもただひとつ理解している。
これは夢で現実に起こっていることではない。
俺の脳内が勝手に見せているものだ。

…ボンゴレのアジトにこんな悪趣味の部屋は無い、よな?

いつになったら目が覚めるのか、ぼーっとしていたが一向にその気配は無い。
無理やりここから出る手段も考えてみたが、だいたい夢からの脱出なんて真剣に考えるのも馬鹿な話だ。

俺は今まで夢なんてほとんど見てこなかった。

優羽はたまに夢見が悪いと朝一で不機嫌になっていたけれど。

「おい貴様」

でもちょこんみたいな効果音つける寝ぐせと戦う姿が可愛くて可愛くて、ああもう!
ほんっと可愛いなあ!!

「おい聞こえてんのか貴様」

そのあと結局諦めて寝ぐせとか幻覚で隠せばいいよって半笑いになる優羽に俺で良ければ一生毎日寝ぐせ直すよ!
とかさりげなく後ろに回って抱きしめると冷たい視線がとんでくるから注意しないとな。
さりげない告白は見事にスルーだし。

寝起きは夢見とか関係なしに基本不機嫌なんだもんな。
まーそんなとこもひっくるめて好きなんだけど!


「……」

カチャっと目の前に向けられた銃口。
その向こうで子供がこちらを睨んでいた。

『…ガキが物騒なもん持ってんじゃねーよ』

子供は俺の挑発には乗ってこないようだ。しかし銃口はしっかり俺をとらえている。
この距離では避けられそうもない。

『てかさ、おまえどっから来たわけ?急に現れたように見えたんだけど』

「くだらん。そんな話しをするつもりはない」

長い前髪から覗くその目は俺を拒絶していた。

『あっそ、じゃあ早く用件言えよガキ。俺そんな暇じゃねーし』

可愛くねぇ。そう付け足し自分の脳内どうなってんだと思わず愚痴る。

急に人の形をしたものが目の前に現れるのは夢にありがちな気もするけど、ガキに銃ってどーなんだ?

まるで妄想じゃん。

「試験だ。最後まで立っていたら認めてやる」

子供が放り投げたのは巨大な鎌だった。まるでおとぎ話に出てくるような死神が持つ大きな刃。
しかし刃は銀ではなく赤、魂ではなく血を吸ったような赤い刃だった。

『は?試験っておい…どういうこと、だっ!!』

背中からの衝撃をそれで受け止める。振り返ると見知らぬ男達が立っていた。
手には剣や銃器といった武器が握られている。
だがその顔に生気はなかった。

『あー…わかりやすくていいわコレ』

自分の手で鈍く光るリングを見つけてやっと状況が理解できた俺は高らかに笑う。

さっさと終わらせますか。


そして俺は死神の如く鎌を振りおろした。

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