ジャンク
□同棲ごっこシリーズ
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同棲ごっこシリーズ
【緒方君と一緒】Vol,01-1ページ目
AM5:30...
ヴーーッ、ヴーーッ…
「………」
枕横に置いたままの携帯が、低音を静かに震わせる。
それに気付いた杏平が、うっすらと目を開けた。
ヴーーッ、ヴーーッ…
震え続ける携帯を手に取り、電源ボタンを押す。
ぴたっと、すぐに止まった携帯…液晶には「アラーム 5:30」の表示。
杏平はぎゅっと目を閉じると、ベッドの中でうんと身体を伸ばした。
暫くシーツの中でもぞもぞと動いていたものの、身体を起こした杏平はベッドから降りる。
目を擦りつつ、すぐ傍の窓…のカーテンをさっと開けた。
街並みがほのかに白く浮き立ち、静かに朝の訪れを告げる。
人の動きはまだまばらだが、ちらりほらりと行きかう人…ジョギング、犬の散歩、新聞配達員…
ぼやけたままの視界に眉根を寄せて、杏平は窓をほんの少しだけ開けた。
一気に流れ込む、外の新鮮な空気を深く吸い込んで吐き出す。
…最初の3日程は、必要以上の警戒心が窓を開ける事も許さなかった。
銃社会、ギャング、1歩路地に入ると別世界…そういうイメージだった国。
ここはアメリカのとあるアパート。
1Bedroomと呼ばれる、リビングとベッドルームとが分かれた一般的な部屋。
幅広い知識と経験を吸収すべく、夏休みを利用しての短期留学。
1ヶ月とはいえ、"彼女"と遠く離れるのは正直……辛い。
いや、今は……"辛かった"が適当か。
壁一枚隔てた隣のリビングに、その"彼女"がいる。
短期留学の杏平を追って、単身渡米した年上の彼女。
驚いた。
思ってもみなかったから。
でも迷惑とかそういう感情はなく
ただ…
嬉しかった。
「………」
杏平は窓を閉じると、その場から離れた。
そして机に置いたままの眼鏡を取る。
定まるいつもの視界に、小さく息を吐き出した。
今日も勉強に次ぐ勉強で、めまぐるしい1日が始まる。
1ヶ月の短期留学だから新聞は取ってないが、TVでニュースのチェック。
それを聞きながら簡単なご飯を取って…7時には学校に着くようにしたいな。
そんな1日の予定を頭で組み立てながら、杏平は部屋を後にした。
隣の、リビングルームへと足を向ける。
そこは例の"彼女"がいる部屋だ。
「………」
リビングと一緒のスペースにあるカウンターキッチンへ向かう前に、杏平はちらりと中の様子を伺った。
窓際のTV、テーブルを挟んでソファ…そのソファに"彼女"は眠っている。
杏平が立っている場所からは、ソファが背を向ける格好になるのだが…端から手がぶらりと垂れ下がっているのが見えた。
一体どんな格好で寝てるのやら。
きっと、健やかな寝息を立てて寝ているであろう"彼女"の姿を想像しながら、杏平の口元が微かにほころぶ。
そして、キッチンへと入っていった。