極若物語!?

□八訓、馬鹿でよかった。鈍くてよかった。
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女なのに女装も何も無いだろうという意見は大変尤もだと思う。
思うが、常のスタンスが男だし、メンタル的にも男で過ごしている今、男装していると言うよりは女装しているという方がシックリくる。
……悲しい事実だわ。

……でだ。
何で危険(心的に)を犯してまでこんな事をしているのか、と言えば……。
まあ、何と言うか。
乙女の事情である。
いくら男で通していてもその……一月に一度来てしまうものは来てしまうし、下着なんかの関係がある。
まさか宗則なんかと行きたくもないし頼みたくもないし、おいそれと頼める物ではないし。

……一度佐伯の奥さんに頼んだこともあったが、素晴らしいセンスの物を買ってこられたという前歴も有るしな……。
ははは。

とにかく自分で行くのが一番なのだ。
……正直リスクもでかいが。

よし。

あの角を曲がったらやっと人混みに紛れられる。
そんな、安堵をいち早く手に入れたかった私は小走りに角を曲がった。
――瞬間衝撃を受け軽く飛んだ。


「っつ……」


「わるい。
大丈夫か?」


どうやら人間にぶつかったようで、目の前に綺麗な男の手が差し出された。
若の時は決して掴まらないが、女の私はその手を借りて立ち上がった。


「こっちの方がよそ見をし……」


相手の顔を見て、私はフリーズした。


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