エファーラン戦記U

□エファーラン戦記 45話〜真摯な想い〜
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「――――――傷って何だ?」
「・・・・えッ?あ―――・・・・・・・・ちょっと・・・・・」

一応セイムから、城下の散策に行った事と、連れ去られたり馬車が襲われた事やキングなどの概要は説明してあるはずだが、怪我をしたことなどは伝えていないらしい。

(まぁ・・・言えないよねぇ・・・・・。)

護衛としてついてきてもらったのに、勝手に攫われて怪我して戻ってきたのだ。



上手い説明ができず、もごもごとしているとヴァインが大きく溜め息をついた。

「俺が狐狩りなんつぅクソつまんねぇもンにつき合わされてる中、城下散策なんて面白そうな事して――――――でも報告に来たセイムがやけに暗くてな・・・説明している途中もずっと拳握り締めてるし。何があったのかと思ったら・・・・。」
「で、でもセイム達は全然悪くないんだからね。私が勝手に怪我しただけだし・・・。」

わたわたと言い訳をするが、ヴァインにガツンといわれてしまった。

「いくら真実がそうだとしても、怪我を負わせて時点で護衛失格だ。勿論あいつらが悪いって言ってるンじゃねぇぜ。ただ、どういう経緯でお前が怪我しようとも責任を負わされるのはあいつらだ。それはどうしようもねぇ身分の差って奴だ。―――――わかったか?」

淡々と告げられる言葉は、まるで思い切り頭を殴られたかのような衝撃を私に与える。
漠然とは思っていた事だったが、改めて人からはっきりと言われるのは正直言って凄くキツイ。
私の不注意で二人が悪く言われてしまうのだ。

(ここまで言われなきゃわからないなんて・・・・私ってバカ・・・。)

ズーンと落ち込んでしまった私の横に、ヴァインはゆっくりと腰掛ける。

「で、怪我は?」
「――――――もう、治してもらっッ・・ヴァヒンいひゃい・・・」

私の言葉は全てを言う前に、ヴァインにホッペを抓られてしまった。

「嘘吐くからだろうが。そういう事ばっかり言ってると、身包み剥いで自分で探すぞ?」
「結構です。」

ヴァインなら本当に本気で、しかも楽しそうにやりかねないので、仕方なく私はその場で立ち上がり夜着と中の肌着の裾をめくった。




「なッッッ――――――!?」

胸の下から臍辺りまでの皮膚が濃い黄緑に変わっていた。
少しずつは回復に向かっているようだが、やはり見たときの衝撃は青紫でも黄緑でも大差はないらしい。

息を飲んだまま固まって私の痣を凝視するヴァインだったが、恐る恐るといった感じで手が伸びてきた。

私は避ける事もなくその場にいると、冷たい手がそっと痣を撫ぜる。

「―――ッ。」
「――ッ、悪りぃ・・・・痛い、か?」

ヴァインは、すぐに手を引くと私の顔を覗き込んできた。
そこには先ほどまでの、射る様な鋭さもなく、かといっていつものような獰猛な気配もない。あるのは、ただ心配げに揺らぐ痛々しい表情だけだった。

「う・・・ううん。もう痛みはない―――押すと流石に痛いけど、でももう・・・大丈夫、だよ。」
「これは・・・キングが?」
「―――・・・・うん。」

ヴァインは私に夜着を下ろさせると、そっと腕を引き片膝に、中を向いて座るように促される。
されるがままに座ると、ふわりとヴァインに抱きしめられた。

「・・・今度城下に行く時は、絶対に俺に声掛けろ。」
「え・・・、だって忙しい、でしょ?」

セイムも勿論忙しいが、ヴァインが相手にしているのは貴族なので、様々な大小の式典から会合まで警護や参加をしなければいけない。

「いいからッ――――――大事な奴が知らないところで傷ついてるかもしれないなんて―――マジで耐えられねぇ・・・・・。」
「―――ヴァイン・・・。」

抱き締められているためどんな表情をしているかわからないが、耳に掛かる吐息がやけに熱く感じる。
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