「SEED・ Destiny」

□・「包み込むモノ」
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--包み込むモノ--


「キラーッ」
波音に紛れるようにして遠くから聞こえた声に、キラはゆっくりと振り返った。
茜色に染まる空の下、燃えるような金色の髪を風になびかせ、彼女は腕を振って砂浜を駆けて来る。
(ああ…白いワンピース姿がとても綺麗だ)
「…カガリ」
キラの口元に自然と笑みが浮かぶ。
カガリはキラの目の前まで駆けて来ると、その勢いのまま抱きついた。
「う…わっ、カガリッ」
予想してたとは言えカガリを受け止めたキラの身体は後ろへと傾き、慌てて数歩後退した。
「キラッ、やっと逢えたなっ!」
キラの首に巻きついたまま嬉しげに耳元で囁くカガリに「そうだね」とキラも頷くと、彼女を抱いたままクルクルとその場で回って、宙で足をバタつかせたカガリを砂浜へと下ろした。
首に回していた腕を解いたカガリの頬は薄っすらと赤く染まっているものの、キラがその両腕を離すまいと優しく引き寄せると、照れたように視線をアチコチと向けながらも、おとなしく腕を絡ませている。
キラはそんなカガリの表情を眩しそうに見つめながら微笑みを浮かべ額同士をくっつけるとポツリと呟いた。
「…今日はもう逢えないかと思った」
「あっ、ごめんっ。色々忙しくてだなっ」
ハッと顔を上げて、すぐに謝るカガリにキラはそっと触れるだけの口付けを唇に落とした。
「…っ。」
すぐに離れた不意打ちのようなキスはカガリを益々真っ赤にさせた。
「あっ、いやっ、あのっ。…キラッ!?」
「……でもいい。こうやってカガリに逢えた」
キラはカガリを胸の中に抱き寄せるとその細い身体を力強く抱き締める。
「…キラ……」
潮風が舞い、茜色の空が二人を包み込む。
「カガリ、好きだよ。好きだ…」
鼓動が溶け合う程、力いっぱいにカガリを抱き締めたキラが呪文のように囁いた。
「…ウン。私もだ」
キラの背にまわしていた腕に力を込めながらカガリも頷く。

そして夜の帳が優しく二人を包み込み…。


…END…

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