「One piece」

□・「夢と現実と」
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甲板に出たゾロは憎々しく顔を歪めて歯軋りをしながら日課のストレッチを始めた。
先程、サンジが己を馬鹿にしたように話した内容を思い浮かべながら…

ここはグランドライン。
エニエスロビーにて仲間であるロビンを政府から奪還し、新しい仲間と共に航海に出たばかりのサウザンドサニー号の上である。


1日のほとんどをキッチンで過ごすサンジは、いつものように一人遅れて来たゾロの為に飯の準備をし、それが終わるとノートを広げレシピの研究に力を注いでいた。

テーブルに腰掛け出された料理を黙々と口に運んでいたゾロは、マッチを擦る音に気付いてテーブルの反対側に座っていたサンジに視線を向けた。
そしてゾロは常々思っていた事を口にする。
「…お前吸い過ぎだろ。仮にもコックならちったぁ控えたらどうだ」
「…ぁあ?」
サンジはペンの動きを止めるとゾロをギロリと睨んでケッと毒つく。
「お前こそ飯の時間に遅れて来るんじゃねーよ。毎度ルフィが喰っちまうから二度手間だっつーの。だいたい筋肉ばっか鍛えてっから脳みそまでコチコチに硬くなって時間が判らなくなんだよ。あぁ、常日頃から迷子になるのはそのせいかぁ」
ヤレヤレと両手を広げ肩をすくめるサンジにゾロは額の血管をピクピクと震わせながら歯噛みする。
一言だけじゃなく二言三言と返してくるコックの舌を思わず刀で削ぎ落としたくなったのは今日が初めてではない。
「オヤ?もう降参で?」
「…っ、うるせぇっ」
ゾロは口ではサンジに勝てないと悟っているだけあって、鼻息荒くバクバクと料理を平らげて行く。
サンジはニヤつきながら紫煙を吐き出しペンを走らせた。

二人の間に流れる空気は「和んでいる」とは程遠いものの、月日を共に過ごしたせいか、そう悪くないものとして漂っていた。

やがて、米の一粒残らず綺麗に平らげるとゾロはスプーンを皿に転がし立ち上がる。
「…ごっそーさん」
「…あいよ。毎度どうも」
サンジは一度だけ皿に視線を向けるが形式的に返事をするのみで、ゾロの存在など気にした様子もない。
その態度にゾロは眉をピクリと跳ね上げ、忌々しげに甲板へ向かうドアを開けながら、それでも首を巡らせサンジを振り返り、
「…大事なコックが早死にしたら俺達が困るだろうが」
ゾロはボソッと呟く。
心配だとは正面きって言えない歯痒さに顔は物騒な程歪んでおり…

が、サンジは鼻で笑ってゾロの言葉を一蹴した。
そしてペンを握っていた腕で頬杖をつくと、胡乱気にゾロを見据えて、
「やっぱりバカはどこまで行ってもバカなんだな。心配してくれるのは嬉しいが、俺が煙草の吸い過ぎで早死にする事になったとしても…その頃にはとっくに俺達の航海は終わってるんじゃないのぉ?俺はオールブルーを見つけて、お前は大剣豪とやらになってな。…俺はともかく、お前はとっくに船を下りてるだろうさ。…それともナニかい?お前は俺と離れたくないとでも?」
薄く笑みを浮かべ揶揄めいたサンジの眼差しにゾロは更に渋面を浮かばせてドアを勢いよく閉めて出て行った。

…それともナニかい?…
…お前は俺と離れたくないとでも?…


END

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