「One piece」

□・「腕枕」
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---「腕枕」---

ここはゴーイングメリー号。
只今グランドラインを順調に航海中の、ある深夜の光景である。

見張りのウソップを残し他の船員達はひとときの休息を味わっていた。
少数精鋭と呼ばれるに相応しい麦わら海賊団の男達にだって睡眠は必要不可欠なのである。


寝返りを打とうとしたゾロは左腕の痺れに気付いて目を覚ました。
「…っ、何だぁ?腕が動かねぇ…」
気配には敏感な自分だから眠っている間に敵に襲われたとは考え難い。
(…指は動くようだが…)
ゾロは重い瞼を押し上げ鉛のように重くなった左腕を見た。
その瞬間思わず息を飲む。
(…エ、エロコック!)
「てっ、テメェはまたっ…!」
ゾロは指をヒクヒクと痙攣させながら顔に渋面を刻んだ。
額からはうっすらと脂汗が浮き出て来るのが判る。
決して寝相が良いとは言えない船員達だが、このイカレタあほコックだけは問題外だ。
日中は目が合うだけでミンチだ何だと火花を散らす間柄だと言うのに、夜になり意識をなくすと、二人仲良く眠っているという光景が日常化しつつある。
サンジは翌日の仕込みを終えてから就寝する為、一番最後に船室へ戻ってザコ寝しては、一番早く起床し朝食の準備に取り掛かっている。
最初の頃はサンジが眠っている姿など見たこともなかったゾロだったが、ごく最近こういう状況を目の当たりにするようになって内心焦っていた。
(…や、やべぇ)
気持ち良さそうにこちらを向いてスウスウと寝息を紡いでいるサンジ。
頬から零れた髪の毛がゾロの腕をくすぐる。
(ど、どつきてぇ!いやしかし…)
サンジは一番睡眠時間が短い。
ここで起こしては喧嘩が始まるのがオチだろう。
皆の迷惑にも掛かる。
それならば腕を引き抜いてやろうか。
いい加減痺れて腕の感覚がなくなって来ている。
いや…、剣士たるものこれしきの重みで弱音を吐くわけには…!

(くそっ…どうすればっ)


「よう、最近ゾロ昼寝ばっかしてんな。何でも夜に鍛錬してるそうじゃねぇか」
ウソップがおやつを頬張りながらサンジに話し掛ける。
「さぁな、植物の考えてる事は俺にはわかんねぇよ。ま、でも俺より起きてんのは確かだなぁ」


サンジは知らない。
連日の腕枕に耐えかねての行動だと言う事を。

そしてゾロも知らない。
サンジに腕とは言え、触れられると身動き出来なくなる自分が居る事を。

…END…

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