頂/捧

□Love is insufficient!
1ページ/2ページ

(……ん?)


昼休み、偶然3年4組の前を通りかかった島崎慎吾は、教室の中に同じ野球部である山ノ井圭輔の姿を見つけて足を止めた。












Love is insufficient!












山ノ井は1人席に座り、ボーッとしている。
それだけでも気になるのだが、彼の親友でもあり恋人でもある本山裕史の姿が見えないことを不思議に思い、島崎は山ノ井に声を掛けた。


「やーまちゃん!」
「……あ、慎吾ー。」


少し間を置いてから、山ノ井は教室に入ってきた島崎を見た。


「どーした?山ちゃん。てか本やんは?」
「慎吾、聞いてくれる?」


山ノ井の前の席に座りながら、島崎は頷く。


「愛が足りない。」
「………は?」
「本やんからの愛が足りないー!!!」
「ちょ、山ちゃん!?」


立ち上がって大声で叫ぶ山ノ井をとりあえず座らせ、島崎は聞いた。


「……山ちゃん、俺にも分かるように説明してくれる?」
















「つまり、山ちゃんは教室でもいちゃつきたいのに本やんは拒否ると。」
「そーなの!それって絶対本やんの愛が足りないからだと思うんだよね!で、慎吾!」
「なに?」
「俺に協力して!」
「え?」
















「山ちゃんただいまー、ってあれ?慎吾も来てたんだ?」


日直の仕事を終え、本山がクラスに帰って来ると山ノ井と島崎が楽しそうに談笑していた。


「あー!本やんおかえりー。」
「おー、本やん。」
「ただいま!2人して何話してたの?」


近くにあった椅子に座りながら、本山は聞いた。


「んーとねー…、」
「てか山ちゃん。」


山ノ井の話を遮って、慎吾が山ノ井に抱き着いた。


「今日帰り、山ちゃん家行ってもいい?」
「えー、なんでー?」
「DVD貸してくれるって言ったじゃん。」
「あー、でも俺まだそのDVD観てないんだけどなー。」
「えぇーいいじゃん!」




ガタンッ!!




大きな音をたてて、本山が立ち上がった。
立ち上がった時の衝撃で椅子が後ろに倒れている。


「山ちゃんちょっと。」
「え、本や……。」


本山はチラリと島崎の方を一瞥し、山ノ井の腕を掴んで教室を出て行った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ