まじめ
□prest.
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「山ちゃんは裕史の事が好きなんだよ。」
prest.
俺が裕史を好き?
「そんなわけないじゃ−ん!」
バッシ−ン!!
俺に叩かれた背中をさすりながら、慎吾が涙目で俺を睨んだ。
「山ちゃんいて−よ…!」
夕日に染まる放課後の教室に、俺と慎吾の二人きり。
六限目が終わって、ちょうど通りかかった慎吾を教室に引っ張りこんだ。
「ちょっと、人がせっかく真剣に相談してんだからさ−、真面目に答えてよ−!」
「だって山ちゃんの話聞いてたら、裕史が好きって言ってるよ−にしか聞こえね−もん。」
慎吾が頭を掻きながらそう言った。
朝、教室に入って俺はいつものように挨拶をする。
「裕史おはよ−…?」
でも今日はいつもと少し違った。
珍しい光景だった。
裕史が女子としゃべってる。
「あ、山ちゃんおはよ。」
「お、おはよ−、ねぇ今日の部活…」
俺が戸惑いながらも話しかけようとすると、女子達が裕史に話しかけた。
「本山君てさぁ−!」
「さっきの話だけどぉ〜、」
話を遮られてムスっとしている俺に気付いたのか、裕史が話しかけてきた。
「ごめん、山ちゃん何?」
「あ−、別にたいした話じゃないからいいよ。」
俺はムスっとしたままそう言って、自分の席に着いた。
裕史が気まずそうにチラチラこっちを見ていたけど、気付かないふりをして携帯をいじっていた。
それからの休み時間。
裕史は女子と、
俺は携帯と過ごした。
携帯の画面とにらめっこしながら、裕史達を盗み見る。
「本山く〜ん!」
裕史と腕組んでんじゃね−よ。
ねぇ。
裕史は平気なの?
俺はもっと一緒に話したいのに。
一緒にいたいのに。
そして放課後。
慎吾に今日のことを愚痴ると言う、今に至るワケで。
「確かに裕史はカッコイイし、一緒にいて楽しいけどさぁ…。」
「でも、嫉妬したんだろ?」
「ん−…。」
俺は机の上に突っ伏して唸った。
いろんな気持ちが頭の中でグルグルして、わけわかんない。
「だって…。」
ぼそぼそと俺は呟く。
「仮に俺が裕史を好きだとしてもだよ。気持ち悪くない?男が男を好きって。」
「はぁ。」
頭上からため息が降って来た。
「山ちゃんさ、裕史がそんなこと言う奴だと思ってんの?」
「………。」
ガタン。
俺が無言でいると、慎吾が立ち上がった。
「まぁ、裕史に山ちゃんの思ってること全部伝えてみ?
話さなきゃ、なんも伝わんねぇって。」
俺が顔を上げると、慎吾はすでに教室の入口にいた。
「それでは慎吾くんは帰ります。山ちゃん…、素直になれよ!じゃ−な。」
「ばいば−い…。」
そう言って慎吾は帰っていった。
「ありがと、慎吾。」
もう見えない幼なじみの背中にそう呟いて、俺も教室をあとにした。