まじめ
□キミガナイタヒ
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山ノ井圭輔は笑ってる。
キミガナイタヒ
山ノ井圭輔は笑ってる。
それはニコニコだったり、ニヤニヤだったり、時にはきゃは♪だったりするが、とにかくいつも笑ってる。
山ノ井圭輔とはそんな男だ。
「なぁ、本山さんよ。」
「なんだい、山ノ井さんや。」
「夏大間近に居残りしてる俺達ってどうよ。」
「ん〜、それは課題やってこなかった俺達が悪いんじゃないかな?」
「ですよね〜。」
放課後の教室に俺達二人きり。
カキ−ン!
グラウンドでは既に野球部が練習を始めていて、窓の外からはボ−ルを打つ音が聞こえる。
「山ちゃんってさ、どんな時泣くの?」
「は?」
俺の突然の質問に、課題を解いていた手を止めきょとんとする山ちゃん。
「あ−、ほら山ちゃんってさ、いつも笑ってんじゃん?泣いてる顔とか見たことないしさ。本山くんちょっと気になるなぁ−って。」
山ちゃんは滅多に怒らないし泣かない。
怒ったとしても、無口になるだけで怒鳴ったりしない。
ましてや涙を流すところなんて見たことがない。
練習試合とかに負けても、自分の悔しいとか悲しいとかの感情を押し殺して、笑顔でみんなを励ます。
山ノ井圭輔とはそんな男なのだ。
「それは俺が糸目だって言いたい訳−?」
ぷくと頬を膨らまして俺を睨む山ちゃん。
「ち、違うって!」
焦って俺が否定すると、山ちゃんは冗談だって−!と笑った。
「そうだな−、本やんとヤってる時とか?」
「それはノ−カウントで!!!」
思わず叫んだ俺を見てまた山ちゃんは笑った。
「映画とか見て泣いたりとかしね−の?」
「それはないな−。本やんよく泣いてるよね。」
「そんな俺を見て山ちゃん笑ってるよな。」
「えへへ−!」
山ちゃんはう−ん、と背筋を伸ばす。
「まぁ、俺が泣くのは本やんに捨てられた時だけかな−。」
「じゃあ一生山ちゃんの泣き顔は見れないな。」
「きゃあ!裕史さん男前−!」
「照れるぜ圭輔、ってか課題やらね−と!」
「ホントだ!監督に怒られる!」
噂をすれば、監督の怒鳴り声が窓の外から聞こえてくる。
少しでも早く練習に向かうため、課題のプリントにペンを走らせた。
俺が初めて山ちゃんの泣き顔を見たのは、
二週間後の、俺達最後の夏大でのことだった。
*あとがき*
シリアス!
初めて書きましたシリアス!
今回妙に会話文が多い…。
しかも、なぜか文体まで変わってきている気がする。
本やんの心の内を書くのが難しかったです。
読んで下さってありがとうございました!