まじめ

□Love magic!
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「始め!」

監督の教師の合図とともに問題に取り掛かる。




でも問題を見て俺は固まった。
…なにこれ。

フライ捕る100倍は難しいんだけど!














Love magic!














えっと…、下線部a、bを現代仮名遣いに直し…、
ん〜、めんどくさいから後回し後回し!




線Aの口語訳…、
口語訳ってなんだっけ?




平家物語の作者…、
あ、これわかる!
紫式部だ!








もう無理!
古典ムズカシイ!
栄口、古典得意とかすご…。

あ、俺名前書き忘れてる!

危ない危ない、と名前を書こうとする手をぴたりと止めた。

そうだ、確かね−ちゃんの持ってた雑誌に…。






よし!

『栄口勇人』

俺は解答用紙に書いた名前ににんまりした。

こうすると両思いになれるんらしいんだよね〜!
ま、俺達はもうラブラブなんだけどさ!


あ〜、早く栄口に会いたい!


あのほわんとした笑顔を思い出して頬が緩んだ。


「水谷!にやにやしてないで早く解答用紙集めて持ってこんか!」

「へ!?あ、すんませ〜ん!!」


チャイムが鳴ったことに気付きかなかった俺は、教師の怒鳴り声で一気に現実に引き戻された。
急いで解答用紙を集めていると、俺の斜め前の席の阿部がこっちを見ていた。
俺がそれに気が付くと、ニヤッと笑って口パクで、


『あ ほ 』


と一言。

う〜!阿部ってホントひどいヤツ!!













「水谷。お前が古典苦手なのは、先生はよ−く知ってる。
でもな?頼むから自分の名前くらいしっかり書いてくれ。」

「うぅ、はい…。」


そう。
俺は、名前のとこに栄口勇人って書いたままあのテストを提出しちゃうという、恥ずかしいことをしちゃったワケで…。
しかも点数も悪かったからWショック。
おかげで、休み時間もこうして職員室で怒られてる。

せっかく栄口に会いに行こうと思ってたのに…。

はぁ。と俺と中年の教師のため息が重なる。

「それにしても、最近テストに友達の名前書くことが流行ってるのか?」

「へ?」

俺は先生の突然の言葉にきょとんとした。

「1組の栄口も、テストにお前の名前書いてたぞ。
真面目な栄口がめずらしい…。」

「!!」

「あ!こら水谷!」

呼び止める教師の声を無視して、俺は職員室を飛び出した。

向かったのは…。












ガラッ!!

勢いよく1組のドアを開ける。

そこにはちょうど、席に座って巣山と話している栄口がいた。

「あれ?どしたの?みずた、」

俺のほうに向かって歩いてきた栄口をぎゅっと抱きしめる。

「えぇ!?ちょ、水谷!?」

俺の腕の中にすっぽりとおさまる細い体。

ふわり、とシャンプーの匂いがした。

「ここ教室…!!」

じたばたしている栄口の耳元でこそっと囁く。


「おまじない♪」


「!!
な、なんで知って…!」


真っ赤になっている栄口をもう一度ぎゅっと抱きしめてから離す。

そしてくりくりとした大きな瞳を見て言う。




「栄口大好き!!」




あぁもう!
このおまじない、効果バツグンじゃん!!














*あとがき*
教室なのにバカッポ−水栄。
栄口くんも、お姉ちゃんの雑誌でおまじないを知りました。
てか文才が欲しい…!
ちなみに平家物語の作者は、紫式部ではなく兼好法師です。
ここまでお付き合いありがとうございましたww

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