魔人探偵脳噛ネウロ

□煙草のニオイ
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煙草のニオイが、鼻をつく。ソレは、いつもの貴方のニオイ。





「………おい」

遠慮がちに言われた言葉に、オレは上目に先輩を見た。


「………石垣、」



オレは今、喫煙場のソファに座ってる先輩の膝を枕にしている。


「やめてほしいなら、突き放せば良いじゃないですか」

当然のように言ったオレに、先輩は驚いたような表情を見せた。
でも、突き放そうとはしない。


煙が先輩の口からフーッと吐き出される。オレはソレが消えるのを目で追った。



「先輩は、ズルイです」
「…何とでも言え」



さりげなく優しくする先輩の行動がオレの心を締め付けてることを、多分先輩は知らない。

だって、言ってないもんね。



「…先輩は、ズルイです。オレばっかり先輩に甘えてる気がします…」
「………そうか?」
「そうですよ。今も、オレの方が甘えてる」
「なら、お前が膝枕してくれるのか?」
「…断じてお断りです。足、痺れますもん」
「……我儘」
「何とでも言ってください」


ふっと軽く笑ってから、先輩の背広に顔を埋めた。途端に痛むようなニオイが鼻孔をくすぐって、オレは顔をしかめる。





「……煙草、嫌いならココに来るなよ」
「…………だって、これは、」


…この、ニオイは、













ソレは、いつもの貴方のニオイ。

2009.3.23.

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