book
□Your sanctuary
1ページ/3ページ
真白い部屋だった。
レースが鈴生りになったカーテンが柔らかく日差しを遮り、白の壁紙に美しく反射した光が幻想的な、見事な洋物が並べられた部屋だった。
そして、その部屋のすべてが、部屋の中央の、やはり真白い椅子に佇む少女に集約している部屋だった。
磨き上げられた白の大理石を彷彿とさせる病的なまでに白い肌。
纏う衣は真珠のように滑らかで、その少女の濃紫の髪だけが、色を持つことを許された空間。
足を踏み入れた途端、誰もが聖域を遥拝する衆生の一部。
美しい彼女の固く閉ざされた瞼は、眠りよりも深い永久。
恐らく藍色の長い髪を一つに束ねた男だけが、躊躇いなく足を踏み入れられる世界。
(自分が一度黒に染めようとした彼女には、やはり白が似合ってしまう)
男は少女の肩に掛かる髪を掬う。
肩に触れた手が、温かさを感じることはない。
ひんやりとしたその感触だけがこの空間のリアルなのだと、この男に解させることは、不可能なのかもしれない。