book
□Will you serve tea?
1ページ/2ページ
いつ雪がちらついてもおかしくない寒空の下、寒々しい格好で歩く少女を見かけた。
少女の身に付けている防寒具らしい防寒具はマフラーひとつ。手袋はおろか、コートすら羽織っていない。
「…クローム」
呆れたというか、信じられないというか。
少女は棒立ちの自分に気付いた。
「スパナ…?」
駆け寄ってきた彼女の頬にはいつもと違う赤みがさしている。
「クローム…日本茶淹れれる?」
「…日本茶…?」
彼女は一瞬不思議そうな顔をしたが、急須と茶葉があるなら、と答えた。
「知り合いに緑茶の茶葉をもらったんだが、ウチには日本の茶の淹れ方なんてさっぱりだった」
それで?とでも言いたげな彼女には、やはり要旨を伝える必要があるらしい。
ウチの研究室まで淹れに来てくれ、と言えばきょとんとする彼女。
急須もあるから、と伝えれば、こくんと頷いた。
(そういえば…この前ボスがスパナに美味しい緑茶を淹れてもらったって言ってた)
(!!……研究室にお茶汲みのロボットが…いるから、…)
暖かい部屋で、底が茶渋で汚れている使い込まれた急須を見つけて人知れずクロームが苦笑するまで、あと少し。