book
□Fireworks of winter
1ページ/2ページ
「冬の花火もいいね」
並中の屋上から、フェンスに手を掛けて、愛しい彼女が呟く。
どうやら隣町で何かイベントがあったらしく、その余興として花火が打ち上げられているらしい。
確かに悪くないとは思うが、あの花火の下に、祝祭と乱痴気騒ぎはイコールだと思っているどうしようも無い連中が叢生していると思うと、腹立たしくも思えてくる。
僕の機嫌の悪さに気付いたのか、彼女がちょっと寒いね、と静かに切り出す。
「冬は花火もいいけど、こう出来るのが好き」
ぎゅ、と冷えた体を寄せてきた。
…彼女はなんて可愛いんだろう。
「僕も冬は好きだよ」
でも花火、というよりは花火を観る為に静かな所で2人きりになれる、から。
そう言えば、顔を赤くして俯く彼女。
そのまま抱き込むと、腕の中から小さな声で私も、と聞こえてきた。
…本当に、彼女はなんて可愛いんだろう。
夏の花火は勿論良いもので、冬もまた然りだ。
だけど彼女の可愛さは一年中。季節なんて関係ない。
可愛い彼女の体が冷え切る前に、下に降りてしまおうか。
あぁ、その前に。
「せっかくの2人きりだしね」