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□Because I am prince.
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同僚のオカマ(語弊はない筈だが)に見送られ、わざわざ出向いたのは廃墟に等しい建物。
「マジでここに住んでるワケ?」
ありえねーし、と転がる小石を蹴り飛ばして、中に踏み入った。
「寒っみ・・・」
隊服である(ベルに言わせれば)そこそこ上等なコートを持ってしても凌げない冷気は、ますますここにヒトなんて住んでいないんじゃないかというベルの疑念を強めた。
しかし、耳を澄ませば聞こえるのは確かに人の声。
吐いた溜息が白かったことと、踏み出した足元から床が軋む音がしたことに、うっそぉ、と驚嘆の声を漏らしながら、ベルは歩を進めた。
漸く辿りついた部屋からは、扉一枚越しに、確かに人の気配を感じる。
無造作に扉を開け放つと、元から部屋の中に居た者たちに戦慄が奔った。
しかしすぐさま2人の少年は1人の少女を守るように臨戦態勢を取る。
そんなことはお構いなしに、ベルは今日の目当てに手を振った。
「王子が直々にお迎えとか、破格の待遇じゃね?」
なぁ、クローム?と同意を求めれば、
「ベル・・・。」
おずおずと少女が前に出てきた。
男2人の警戒が解けないのは、前に彼女を縛り上げたこともあるから仕方がない。
ベルはクロームの手を取って、
「明日には帰してやるよ」
と少年2人に言い放った。