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□A happy new year !
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クロームは目を覚ました。
何故だかやけに温かい。
もぞ、と体を捩らせる。
そこで、クロームは自分が肩まで炬燵の中に収まっているのだと気付いた。
ほんの少し目線を上げると、固く目を閉じる黒髪の少年が飛び込んでくる。
(あぁ、そういえば)
昨日の夜、適当にテレビを付けながら、彼とみかんを食べていたっけ。
みかんの味が単調に思えてきたころ、お蕎麦を食べて、またみかんが恋しくなって、手を伸ばして。
もとから夜に強くない彼は舟を漕ぎ出し。
虚ろな目をしながら、手は律儀にみかんを剥こうとしていて、なんだかそれが面白く思えて。
彼の手の中の中途半端に剥きかけのみかんを最後まで剥いてやって、彼の口の前に差し出した。
怒るかな、と思ったけど、寝ぼけている彼は目に映るものをみかんと認識するや否や、ぱく、とみかんに食いついた。
今度こそ、本当に怒られそうだと思ったけど、それがすごく可愛く思えてしまって。
自分がみかんを食べることも忘れて、夢中で彼に餌付け?した。
遠くに聞こえる除夜の鐘も、残り僅かで聞こえなくなる。