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□Who is your master?
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黒曜ランドへの帰り道、クロームは黄色の小鳥を見かけた。
…なんて可愛いんだろう。
ふかふかの自分羽に顔をうずめるようにして、日だまりの塀の上で微睡む小鳥。
…触りたい。
でも、きっと手を伸ばしたら、飛んでいっちゃう。
外面では静かに小鳥を見つめるクロームの内に渦巻く葛藤に、小鳥は気付いたのか。
その小さな目で、クロームを捉えた。
ほぼ無心でそれに応えるクローム。
通行人がいなかったのが幸いだ。
この場面を見たら、きっと大抵の良識ある一般人はクロームの方を辺鄙だと思ってしまう。
クロームは、何も考えず、小鳥に手を伸ばした。
逃げてしまう、とか、怯えさせてしまう、とか、そんなものは完全に意識の外に追い出されていた。
小鳥は、その体躯に似つかわしくない優雅さで、クロームの指に着地した。
(人慣れしてる…)
こんなにこの小鳥が人を恐れないのも、美しい毛艶をしているのも、可愛がって、大切にしてくれる人がいるからだ、とクロームは思った。
「あなたの飼い主さんは、きっととっても素敵な人なのね」
問い掛けると、小鳥は嬉しそうに羽を上下させた。