book
□sea and promise
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そのせいか彼女は時折思い出したように(無自覚かもしれないが)僕を責めるのだ。
一方少女は、本当に海にはいきたかったのだけど、この応接室で少年と過ごした夏に、何の不満も抱いてはいなかった。
彼女はただ、「海」という単語を口にした時のみ目に出来る少年のめったに見れないばつが悪そうな顔が見たかっただけなのだ。
(海、ね…)
来年の夏場は風紀委員を総動員して、責任のありそうなところに圧力をかけてみるか…
そう考えたとき、少年は自分の初歩的な見落としに気が付いた。
「コートとマフラー、あとヘルメット用意して」
「どこか行くの?」
「冬の海だってなかなか乙なものだよ」
海が楽しい思い出になったら、少年のあの表情が見られなくなるのか、と本当に、本当にちょっぴり残念だったけれど、自然に少年を追いかける少女の足取りは、とても嬉しそうだった。