ワンダフルデイズ
□ワンダフルデイズ5
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えーと、次の授業は英語えいごー……
「あ、やばっ!辞書忘れたぁぁ!!」
*ワンダフルデイズ・5日目*
しまったァァァ!
なんなんだよあたる日に限って忘れるって!
いつもは重たくても持ってきてるのに!
死にたい!
「相変わらずドジアルなこかげは」
「他のクラスの子に借りてきたら?」
「うん、そーする!」
授業まであと10分はある。ダッシュすれば間に合うだろう。
こかげはすぐさま教室を飛び出していく。
が、ドアを開け廊下に出たところで何かに足をとられ思い切りコケた。
「うおおう?!」
ズザアァァァァ
い、痛い…半端なく痛い。
そして周りの視線も痛い。
くぉらァァァァ誰だァァァ
こんなとこに物おいてる輩は?!
傷いってしもうたやろが!
精神的な傷もいってしもうたやろが!
怒りをこめて振り向くとそこには
「ひ、土方くん?!」
なんと土方くんがいた。
現金なもので般若のような顔だったこかげの表情は花が咲いたように明るくなる。
土方くんはどうやら床に膝をついてロッカーをガサガサやっていたようでわたしはそれに躓いてしまったらしい。
床にスライディングをかまし倒れているわたしを土方くんは驚いた顔で凝視していた。
恥ずかしい死にたい!
「ごごごごごめん!蹴っちゃったよオイ!怪我してない?!」
「いやお前が大丈夫か?結構吹っ飛んでたけど…」
「いやわたしは平気平気!頑丈だから!それより何か探してるの?」
「あ?ああ、家の鍵なくしちまってよ。教室にはなくてロッカー探してた」
床にはロッカーから出されたであろう胴着やら竹刀やらマヨネーズやらが無造作に置かれていた。(なんでマヨネーズ?)
ロッカーをひっくり返しても見つからなかったようだ。
だがこかげは胴着の隙間に光るものを見つけた。
「土方くん、それ鍵じゃない?」
「あ?」
胴着の袖のあたりにマヨのストラップがついた鍵が引っかかっていた。
それを手にとり、土方くんに見せる。
「これこれ」
「これだ!あー、そういえば朝練の時ここにいれてたよーな…。助かったわ、さんきゅーやぼし」
「いやいや!あ、そうだコレあげるよ」
そう言ってこかげは自分の家の鍵につけている鈴のストラップをあげた。
「これは…」
「いつも鍵につけてるんだけど、これがあると落ちても音がするからすぐわかるんだ!」
「なるほどな」
土方くんは少し微笑みながら見つかった鍵にその場で鈴をつけてくれた。
ちりんちりん、と鈴の綺麗な音が廊下に響く。
まるで廊下にわたしたち二人しかいないような錯覚を覚えた。
ちりん、
「ありがとうな、大事にするわ」
鈴を顔のあたりまで持ち上げて土方くんは微笑んだ。
その格好良すぎる笑顔に思わず顔が赤くなる。
「うううううん!どういたしまして!じゃあね!」
「おう」
はやる胸を押さえこかげは教室に戻った。
席にもどると神楽ちゃんと妙ちゃんが待っていてくれた。
「遅かったアルな」
「うん!ちょっとね!」
さっきのことはなんとなく秘密にしておきたくて、ちょっと悪い気がしたけど2人には黙っておくことにした。
土方くんとわたしの秘密
……なんてね!
ふはははは!
「で、辞書は借りられた?」
…………………
……
「……しまったァァァァ!!」
「…馬鹿でィ」
一部始終を見ていた恋の協力者は呆れた目でこかげを見ていた。
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