新婚

□最愛の人
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※銀時視点




















【明け方の街は しらけた表情で

眠れないボクのことを見下ろしてる】








朝目覚めて頭に浮かんだのは
そんな歌詞だった。




覚えるつもりなんてなかった。

でも アイツが、
ハマったドラマの主題歌だとかで
四六時中口ずさんでいやがるから、
嫌でも覚えてしまった。



そんなアイツと
くだらないことで喧嘩して
結局 一晩 うだうだ考えていたら
ロクに眠れなかった。




布団から重い体を起こし
居間に続く襖を開けるが、人の気配はしない。
窓から差し込んでくる朝陽がイヤに眩しかった。


アイツは出掛けたようだった。
まだ機嫌は なおっていないらしい。

だが机の上には蠅帳があり、
持ち上げて中を覗くと朝飯が用意されていた。









先日大きな仕事があり、
珍しく財布の中は潤っている。

街をブラブラとしていたが、
気分転換にと、久しぶりに映画館で映画を見ることにした。

お供はキャラメルポップコーンといちご牛乳。


適当なものを選んで観たが、
内容はベタなラブストーリーだった。


喧嘩をして色々な壁を乗り越えて
くっつく恋人たちの話。

画面の中で仲良くイチャつく登場人物たち。
イラついた俺は
ポップコーンをワザとガリガリと音を立てて齧った。















夕暮れ時、
たまたま道で会った長谷川さんと飲み屋に入った。

イラついていたからか俺はハイペースで飲み続け、
気づけばネチネチと長谷川さん相手にアイツのことを愚痴っていた。

大体な、アイツが悪いんだよ

俺が怒っても、いつもだったらすぐ
ごめんね、って謝ってくんのに、
昨日に限ってアイツは謝らなかった。

俺も自分から喧嘩吹っ掛けた手前
引っ込みがつかなくなってしまった。

酔いがまわり、
コンチクショー!と叫んでカウンターに突っぷすと
まぁまぁ、と長谷川さんに背中をポンポンとたたかれた。









夜遅く帰宅したが、
いつものアイツの出迎えはなかった。

和室へと続く襖をそろっと開けると
アイツは部屋の隅の方に布団を敷いて先に寝ていた。

壁の方を向いていて表情は見えない。

なんだよ、
まだ怒ってんのかよ。

でも、
机の上には朝と同じように また蠅帳が置いてあって
中には茶漬けと出汁が用意されていた。










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