Dear

□私のモノになって?ルーシィ
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「欲しいなあルーちゃんが」








「え……?」











てん、てん、てん、まる。
一瞬何を言われたか理解できずルーシィは固まった。
欲しい。確かに欲しいといわれた。
ツゥと自然と汗が額をつたう。
先ほどのにんまりとした可愛い笑顔ではなく、
弧を描くように口が上がり目をうっすらと細め、


それはとてもとても妖艶に笑った。













「ルーシィが欲しいなあ」




「沢山愛でて沢山愛してあげる」




「欲しい物があるなら買ってあげる」




「食べたいものがあるなら食べさせてあげる」





「貴女が望むならその望みすらも叶えてあげる」






「だから」






「私もモノになって?」






「ルーシィ」








魅了(チャーム)を使われているのかのような錯覚に襲われる。
イリスが別人のように見える。
一輪の気高き華のように、
白い絹のような滑らかな肌を身にまとった人形のように、
甘い甘いお菓子のように、


とてもとても魅力的だ。


差し出されている手が悪魔の誘いだとわかっていても、
その手を取ってはいけないとわかっていても、
この状況がおかしいとわかっていても、



差し出されている手を求め、



手を伸ばした。








「イリス!!!」







周りの何とも言えない空気を破って、


グレイは名前を呼んだ。叫んだ。


喋ってはいけないよ。


私と彼女の邪魔をしないで。


ここは私と彼女の空間。


そんな雰囲気の中叫んだ。


ふわり、と空気が揺れ皆正気を取り戻す。


ルーシィも伸ばしていた手を引込め胸の前でぐっと握った。












「なんで、邪魔したのかな?」

「こいつは仲間だろ」

「うるさいなあ」







すうっと瞳の色が変わっていく。







「少し黙ってなよ」














「やめるんじゃ」













「糞ジジィが、」










ッチと舌打ちをし、ギロリと睨む。
それはまるで敵を睨むかのように。











「引っ込むんじゃイリス」

「それは‘私’に対していっているの?」

「今のお前はそのお前ではないだろう」

「何をいってるのかな?」

「引っ込まぬというならば」







マカロフはスっと指を向けイリスへと狙いを定める。
ぱあん!とはじけるかのように軌道を放ち、イリスの肩へと貫通させた。
その衝動で後ろへ吹っ飛び、ッガハ、とその場に吐血した







「な、何やってるんだよじいさん!」

「イリス!!」






閉じていた瞳がスゥっと開いた。
その瞳に先ほどの色は失い、
もとの色に戻っていた。





「いったいなあ、もう」

「成敗じゃ」




ふん、と手を腰にあて少し怒り気味に言った。






「でもありがと、助かったよマスター」







もう一人の……。



(ふふ、ごめんねルーちゃん)
(元に、戻った…?)
(たく冷や冷やさせやがって)
(でもあきらめないよ?)


にっこり、いつも通りの花のような笑顔を向け、
そう、一言つぶやいた。

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